研究課題/領域番号 |
17K17946
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20512627)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シアノバクテリア / 概日リズム / ノイズ |
研究実績の概要 |
生命現象のうち約24時間周期でくり返される現象は概日リズムとよばれる。生体内の自律振動子が生み出す概日リズムは、外界の明暗サイクル・温度サイクルに同調する。これまでの概日リズムの実験研究では外力として矩形波・正弦波などの周期的な波が暗黙のうちに用いられてきた。本研究提案ではこの前提をはずし周期サイクル以外の刺激による細胞集団の同期を目指した。非線形動力学の分野でノイズ同期とよばれる現象が近年理論的に発見された。これは相互作用の無い複数の振動子に共通のランダムな刺激(ノイズ刺激)を与えると同期が促されるという現象である。ノイズ刺激が自然条件下で概日リズムの同期に有効であることを本提案では確認する。 本年度は、ランダムな光刺激を当てられる光源を作製し、液体培地中のシアノバクテリア概日リズムのノイズ同期現象の観察を試みた。シアノバクテリア概日リズムのダイナミクスは改良されたルシフェラーゼ生物発光株を用いて観測した。短い光変化では概日リズムは応答しないことがわかった。これは細胞内部に高周波数成分の外部刺激を遮断する回路があることが示唆している。 また1細胞レベルノイズ同期現象が観察系の構築も行った。近年開発されたシグナル強度が生物発光よりも高く分解能が優れたYFPによる概日リズム観察系を利用し、1細胞測定系を構築した。1細胞レベルの時計のダイナミクスの観察を行い、画像解析を通して位相・振幅・周期の情報を現在解析しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験系の構築に関しては予定通り完了した。結果を解析しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
シアノバクテリアが高周波数成分の光に十分に応答しない、ということであれば、生物種を変えることも検討する必要がある。頭足類が持つ色素胞のリズムに関しても同様のノイズ刺激に同期現象の観察を行うことを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の残金1355円と次年度の執行額と合算して、顕微鏡等を購入する。
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