生命現象のうち約24時間周期でくり返される現象は概日リズムとよばれる。生体内の自律振動子が生み出す概日リズムは、外界の明暗サイクル・温度サイクルに同調する。これまでの概日リズムの実験研究では外力として矩形波・正弦波などの周期的な波が暗黙のうちに用いられてきた。本研究提案ではこの前提をはずし周期サイクル以外の刺激による細胞集団の同期を目指す。 非線形動力学の分野でノイズ同期とよばれる現象が近年理論的に発見された。これは相互作用の無い複数の振動子に共通のランダムな刺激(ノイズ刺激)を与えると同期が促されるという現象である。ノイズ刺激が自然条件下で概日リズムの同期に有効であることを本研究では確認した。 ノイズ同期現象がシアノバクテリア概日リズムにおいて観察されるかどうか確認するために、シアノバクテリアの液体培地中の概日リズム、固体培地上の各コロニーの概日リズム、1細胞レベルの概日リズムの3つの実験系を構築する。それぞれの系においてノイズ同期現象が観察されることを目指した。 その結果概日リズムは極めて短い時間の刺激には応答しないことがわかった。これは、光入力系から概日時計振動体までの間にローパスフィルターの役割をするシグナル伝達経路がはさまっているからだと考えられる。このノイズ同期を検討する上で、低温下でシアノバクテリア概日リズムは振幅が小さくなる応答性を増すことを見出した。ノイズ同期現象が起こる可能性は温度パラメータを降ることによって、引き続き検討を続ける。
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