研究課題/領域番号 |
17K17948
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
木村 拓馬 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60581618)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 精度保証付き数値計算 / 数値計算 / 数値解析 / 微分方程式 / 発展方程式 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,発展方程式の解の存在範囲もしくは一意存在の範囲を特定する精度保証付き数値計算法の開発である.解の存在を示し数値解の誤差を厳密評価することで解の存在範囲を特定することができる. 今年度は,放物型偏微分方程式に対する数値解の誤差評価について,線型方程式の初期値境界値問題に対する最良オーダーな手法と,周期解に対する手法への応用について研究を進めた.当初の計画では,線形方程式に対する最良オーダーな事前誤差評価ののちに非線形問題への応用を検討し進捗によっては周期解,としていたが,周期解についての共同研究が進んだためこれを先行し,非線形問題は保留とした. 線形放物型偏微分方程式の初期値境界値問題に対しては,解の滑らかさに関する仮定を加えてこれまでの提案手法を改良することにより実際の誤差と同じオーダーで数値解の事前誤差評価が導出できる.この誤差評価の手法について査読者の指摘を受けて修正・改良を加えた論文1編が国際的な査読付き学術誌に掲載受理された.これは本研究課題のうち高精度化についての根幹となり得る成果であり,この手法の応用によって非線形問題や周期解についても高精度な手法が開発できると考えている. そして,2年目の目標であった初期値境界値問題に対する誤差評価手法の応用による周期境界値問題に対する誤差評価法について着手した.周期を仮定し時刻を固定したときの解の存在範囲についてのノルム評価を導出し,それを初期値ないし境界値として補完近似することによって得られる数値解についてこれまでに提案された手法の応用・拡張によって誤差評価式を導出できることを確認した. これについては現在数値例による精度の確認を行うとともに論文を執筆中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際的な査読付き学術誌に論文1編が掲載受理されており, 当初の計画とは若干異なるものの本研究課題に関する成果を得られている.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,初年度までに行った線型方程式に関する研究成果を基礎として,非線形放物型方程式の初期値境界値問題に対する解の存在証明と数値解の誤差評価の研究を進める.これまでに提案してきた非線形問題に対する手法と同様に,まず線形化された残差方程式を導出し,数値解を中心としたゼロ付近に不動点があるような不動点形式に変形,そしてゼロ中心のボールを候補者集合とする不動点定理を用いて解の存在条件を導出する.初年度までの研究において線形方程式の解についていくつかのノルム評価を導出できており,非常に複雑な形になることが予想されるものの,適当なノルム評価を駆使して解の存在を証明するとともにこれまでより高精度に解の存在範囲を特定する手法が開発できると思われる.また,本研究で扱う行列指数関数を用いた近似解を挟む三角不等式による有限要素近似解の誤差評価手法が最近提案されており,この手法の応用によって精度は落ちるものの複雑な計算を必要としない誤差評価手法の開発が期待できるため検討したい. また,初期値境界値問題に対する手法の応用による非線形問題の周期解に対する数値解の誤差評価手法の開発や,線形問題の周期解に対する最良オーダーな事前誤差評価出についても検討する.現在線型方程式の周期解に対する手法の研究を進めているため,場合によってはこれらの開発を先行する. 進捗によっては,解の高階微分可能性を用いた,さらなる高精度化についても検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は海外出張・国際会議への参加に係る費用を計上していたが,用務の都合により海外出張をしなかった.また,書籍等の購入について,独立基盤形成支援に係る学内予算を優先して執行した結果,計画と支出額とに一時的なずれが生じた. 次年度は査読付き国際会議への投稿・参加を予定している.当該年度の未使用額は,国際会議への参加に係る費用および書籍等の購入費用を中心として,研究課題を遂行するために適切に使用する.
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