研究課題/領域番号 |
17K17949
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
河端 雄毅 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (50606712)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人工飼育魚 / 人工種苗 / 離底行動 / 学習 / 観察学習 / 対捕食者行動 / 逃避 / 被食回避 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、人工飼育魚への1種の捕食者の学習処理が、同種および異種捕食者への対捕食者行動に及ぼす効果を明らかにすることである。2017年度は、ヒラメ人工飼育稚魚を供試魚として実験を行った。まず、ヒラメ稚魚に、同種他個体がイシガニに食べられる様子を観察させた(観察学習)。続いて、「別種捕食者であるカサゴを提示」、「同種捕食者であるイシガニを提示」、「捕食者を提示しない」の3つの条件下で、学習個体と非学習個体の離底行動(底を離れて遊泳する行動)を測定し、捕食者間・学習処理区間で比較を行った。 学習個体、非学習個体ともに、「別種捕食者であるカサゴを提示」では、「同種捕食者であるイシガニを提示」、「捕食者を提示しない」に比べて離底回数および高く離底する割合が低かった。底に居る餌生物を捕食するカニなどの捕食者に対しては高く頻繁に泳ぎ上がることが有利だと考えられるが、遊泳している餌を捕食するカサゴに対しては底に留まることが有利だと考えられる。よって、ヒラメ稚魚は先天的にある程度、捕食者に応じて離底行動を変化させると考えられた。 一方で、イシガニを学習させると、ヒラメ稚魚はより頻繁に、より高く離底することが分かった。この結果は、別種捕食者であるカサゴを提示した場合や捕食者を提示しない場合でも同様であった。ヒラメ人工種苗にアナハゼを観察学習させた先行研究では、学習により離底回数が減少し、低い離底の割合が増加することが報告されている。よって、底に居る餌生物を捕食するカニなどの捕食者を学習した場合には、その捕食者を避けるように頻繁にかつ高い離底行動を示し、遊泳している餌を捕食するアナハゼやカサゴなどの捕食者を学習した場合には、その捕食者に見つからないように離底頻度を低下させるとともに低い離底を行うようになる可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒラメ稚魚への1種の捕食者(イシガニ)の学習処理が、同種(イシガニ)および異種捕食者(カサゴ)へのヒラメ稚魚の対捕食者行動にどのような効果をもたらすかが明らかになったため。
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今後の研究の推進方策 |
人工飼育魚にカサゴを学習させて、上記と同様の実験を行う。また、捕食者と人工飼育魚の対面実験により、捕食者回避に関わる人工飼育魚の行動・運動特性を特定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会発表で旅費を計上する予定であったが、発表予定の研究協力者(大学院生)が発表助成を得たため、旅費を計上する必要がなくなった。また、知り合いの研究者より飼育装置(水槽、濾過装置、消耗品)を譲り受けたため、当初の想定よりも水槽設備の設置に予算がかからなかった。以上から、予算を次年度に繰り越して、旅費・消耗品費・英文校閲・論文投稿料等に使用することとした。
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