研究課題/領域番号 |
17K17953
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮原 麗子 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40567301)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ビタミンD / 呼吸器感染症 / 小児 / 自然免疫 |
研究実績の概要 |
ベトナム人小児の死亡また入院疾患の原因の80%が感染症であり、中でも呼吸器感染症による入院割合が最も高い。これまでの研究からビタミンD不足は自然免疫応答能を抑制し易感染性をもたらす要因ではないかと推測されており、呼吸器感染症発症との関連が注目されている。ベトナム人小児の約半数がビタミンD不足であると報告されていることから、ビタミンD不足がもたらす小児の健康への影響を知ることは重要である。本研究は2歳時のベトナム人小児を対象に、ビタミンD不足と自然免疫反応や感染症発症との関連を検討することを目的としている。 本研究は2009年からベトナム、ニャチャン県で行われたベトナム人小児を対象とした出生コホートの一部として実施された。2017年にベトナム国立衛生研究所の共同研究者から研究同意を得て、ベトナム出生コホート研究に登録した360名のベトナム人小児の2歳時点での血清検体を用いて、ELISA法で血中ビタミンD値を測定した。これまでの報告同様、およそ半数の小児がビタミンD不足であることが確認された。ビタミンD不足をもたらす原因となる社会環境要因との関連を解析した結果、母親の年齢や小児の性別との関連が明らかとなった。 今後、同時期に採取した血液検体を用いて行った免疫応答能実験による血中サイトカインmRNA量測定結果と併せて、ビタミンD不足と自然免疫反応との関連を統計学的に解析していく予定である。さらに、ビタミンD不足が感染症への易罹患性やワクチン応答能に関連があるという報告があることから、これまでの感染症既往との関連性や、B型肝炎ワクチンへの応答能との関連を解析していく予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2017年に実施予定であったビタミンD測定実験は終了しており、現在結果を解析中である。2018年度に解析結果を学術論文として発表することを目標としており、予定通り研究は進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
現在360名分の血中ビタミンD値の測定が終了したが、これまでの解析結果からワクチンへの応答能との関連や、環境因子がビタミンD値に与える影響が示唆される結果を得た。より結果を強固に裏付けるためにも、検体数を増やす必要があり、全出生コホート研究参加者(1300名)を対象に血中ビタミンDの測定が必要であると思われる。実施のため予算の追加確保を考慮している。また、2016年までに対象小児を6歳までフォローアップしてることから、2歳時点での血中ビタミンD値がその後の感染症やアレルギーによる通院や入院歴にどのように関連してくるかを、これらの追加臨床データと併せて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していたmRNAの追加測定実験を行わなかったため物品費の購入金額が計画よりも少なくなった。次年度にビタミンD測定実験の検体数を増やして追加で行う予定のため、物品費として次年度に使用する予定である。
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