本研究は、ベトナムで行われた出生コホート研究の検体と追跡データを用いて、小児のビタミンD血中濃度と感染症疾患やアレルギー疾患との関連、またビタミンD欠乏の理由を明らかにするものである。ビタミンD 血中濃度とToll様レセプターを介した自然免疫との関連も示唆されており、小児の血液検体を用いてビタミンD血中濃度とToll様レセプター刺激後のサイトカイン発現の関係を明らかにする。ビタミンDの血中濃度が感染症やアレルギー疾患と関連があることをコホート研究で明らかにすることができれば、小児へのビタミンD投与による感染症やアレルギー疾患の予防につながることが期待される。 まず出生コホートに初期に登録された360名を対象に2歳時点のビタミンD血中濃度の測定を行なった結果ビタミンD欠乏もしくは、不十分な血中濃度小児が多く見られたため、今年度追加でビタミンD血中濃度の測定をしToll様レセプター刺激後のサイトカイン発現量との関連を解析した。しかし、長期に保管していた影響で保存血清の質が劣化しており追加で実施したビタミンD血中濃度の測定が安定しなかったため、数を増やしての解析が困難となった。そのため、初期の360名を対象としたToll様レセプター刺激後のサイトカイン発現量と2歳時の血球数分類に注目し解析を進めることとした。また、出生コホートに登録した小児が6歳になった時点でのアレルギー疾患と関連を追跡結果を入手し、アレルギー疾患に関連がある因子について解析を実施した。解析結果から、2歳時の血球数、特にMonocyteの数が6 歳時のアレルギー疾患の有無に関連していることがわかり、Monocyteの数とToll様レセプター刺激後のサイトカインの発現とも相関があった。これらの解析結果について論文を執筆し国際学術誌への投稿を進めている。
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