研究課題/領域番号 |
17K17954
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
安部 美和 熊本大学, 熊本創生推進機構, 准教授 (40619805)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 災害復興 / 集団移転 / コミュニティ / 復興政策 / 移住 / 自然災害 |
研究実績の概要 |
本研究では、自然災害後の集団移転について、その多様性を示し被災者のニーズにあった復興過程をたどるために、「持続可能な集団移住」の有効な選択肢が加えられる必要性を示すことを目的としている。過去の自然災害後の復興事例では、集団移転による居住地再建が進められているにも関わらず、過去の事例や政策の運用について復旧期に参照できるツールがなく個別に事例をあたるしか方法がなかった。そこで本研究では、自然災害後の集団移転に関するデータを蓄積し、今後の災害復興政策に援用可能なデタベースの作成を目標として我が国における過去の集団移転の事例を分析し、政策やコミュニティの再生過程について明らかにすることを試みている。 2021年度は、日本における自然災害後の集団移転としては国内最長の長距離移転による生活再建を試みた奈良県十津川村での水害事例をもとに、北海道新十津川町が形成されるにいたる過程を明らかにするため、文献調査及び聞き取り調査を実施した。その結果、「北海道開拓」という目的を共有した移住者たちは、大正3年の桜島からの移住者同様「新しい土地での開墾」を共通目標として結束したことが分かった。また、国策における開拓であったため鉄道の整備など移住後の生活に不可欠なインフラの整備が行政によってなされ、居住地開墾と並行して行われたことが分かった。現在でも両地域には交流があり、そうした交流を半世紀以上継続できている要因についても行政及び移住者の子孫に聞き取り調査を実施し史実の収集を行うことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度以降、新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、地域でのヒアリング調査等を予定していたが調査地域から調査中止の依頼があるなどして、対面による調査の実施が困難な状況にある。研究対象としている地域では高齢者が多く遠隔によるヒアリングも厳しいこと、地元図書館や行政が保管している行政資料にアクセスするためには現地調査が欠かせないことから、当初の予定から遅れをとっている。ただ、2021年度は予定していた新十津川町での調査を実施でき、十津川村での現地調査も実施できたことから資料集やヒアリングが一昨年度に比べて実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目標であるデータベース化には、まだ資料収集やヒアリング調査が不可欠であるため継続して現地調査を実施予定である。また、遠隔によるコミュニケーションの可能性が以前以上に増していることから、成果発信の方法によりWEB活用を検討するなど現状に合わせた発信方法を検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、当初予定していた聞き取り調査等の現地調査が実施できず延期となっているため。また、成果発表を予定していた国際学会等も中止が続いたため。
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