本研究では、平成25年度まで実施した研究成果を発展させ、自然災害後の集団移転について、その多様性を示し、被災者のニーズにあった復興過程をたどるために、「持続可能な集団移住」の有効な選択肢が加えられる必要性を示すことを目的とした。特に、①自然災害後の集団移転に関するデータを蓄積し、今後の災害復興政策に援用可能なデタベースの作成と、②データや現地での聞き取り調査の結果から、集団移転実施者における復興感について明らかにすることの2つを目的としている。 本年度は、②に該当する移転実施者たちの復興感や継続的な定住に結び付く要因について、「長距離集団移転」という現在では積極的に用いられない方法について過去の事例を精査し、今後の大規模かつ広域災害時にも「長距離」の集団移転が選択肢の1つとなりうる可能性について明らかにすることを試みた。 明治22年に発生した水害では、奈良県の十津川村から北海道に移住した事例があり、当時の移住政策に至った背景や移住の決定に至るプロセス、現在まで継続している地域のつながりにフォーカスし、どのような要因が移住の決断や移転先での生活の継続に影響しているのかを、ヒアリング調査、文献調査をもとに明らかにした。その結果、単なる住宅の再建目的での移転ではなく、暮らし全体の再建を目的にインフラ整備や生業の支援など、北海道開拓事業に組み合わせた移住方法が取られていた。また、行政だけではなく被災者(移住者)たちも、移住後の生活の中で他地域からの移住者との混在を受け入れ、伝統文化などを柔軟に変化させていくことで、移転先での新しいつながりや文化を形成していることが分かった。
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