本研究では、変形性膝関節症の関節内投与製剤の開発を目指して、DDS製剤化に応用できる関節内の加水分解酵素の特性を明らかにすることを目的としている。 変形性膝関節症では滑膜の炎症に伴う毛細血管透過性の亢進により、関節液に多くの血漿成分が移行しており、これまでに、患者関節液中にParaoxonase 1 (PON1)およびButyrylcholinesterase (BChE)が存在することを明らかにしている。また、患者関節液の検体(60検体)を用いて、PON1およびBChE活性とX線診断による病態グレードI-IV (Kellgren-Lawrence分類)との関係を検討した結果、BChE活性は変動せず、PON1活性がグレードⅠからⅡに進行した際に低下する予備的知見を得た。 さらに、Ca2+イオンがBChE活性に及ぼす影響について検討した結果、アニオン性の基質であるAspirinに対する活性はCa2+イオン濃度の増加に依存して増大したが、カチオン性の基質であるButyrylthiocholineに対する活性は若干、低下した。また、同じカチオン性基質のPropranolol誘導体に対する活性はCa2+イオン濃度を変化させても変動せず、BChE活性へのCa2+イオンの影響はアニオン性基質とカチオン性基質で異なることを明らかにした。
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