研究課題/領域番号 |
17K17965
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
岩永 崇 鹿児島大学, 医歯学域附属病院, 診療放射線技師 (40444830)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | CESTイメージング / Glycogen CEST / 肝臓 |
研究実績の概要 |
生活習慣病を含め多くの疾患が、グリコーゲンの生成、貯蔵または代謝に関連している。近年、新たな分子イメージング法である chemical exchange transfer (CEST) イメージングによる生体内の様々な化合物・生体内環境の評価が可能となり、その臨床応用が試みられている。グリコーゲンはヒトにおけるエネルギー貯蓄の重要な形態であり、肝臓は骨格筋とともにグリコーゲンの重要な貯蓄器官である。現在、肝臓糖代謝の測定は血液検査による血糖値やグルカゴンおよびインスリンなどのホルモン濃度による測定が一般的であり、これまでの画像法による定量評価は困難である。 本研究ではCEST法の中でも生体内におけるグリコーゲンを間接的に検出する画像法であるGlycogen CEST (GlycoCEST)イメージングの人体の肝臓糖代謝測定における有用性を明らかにすることを目的としている。 GlycoCESTイメージングはバルク水の共鳴周波数に近い +0.5~1.5 ppm のヒドロキシル基を対象としており、飽和パルスを±0.5~1.5 ppm に照射した画像を差分処理することにより、グリコーゲン濃度を反映したコントラストを得ることができる。本年度は昨年度に引き続き、GlycoCESTイメージングの撮像パルスシーケンス最適化のため、新たにグリコーゲン試薬を用いたファントムを作成し、昨年度とは違った形状の飽和パルスを使用してデータ収集および解析を行った。 ファントムによるデータ収集を繰り返し行い、グリコーゲン濃度に対応したCEST効果を得ることができた。しかしながら、いまだに静磁場(B0)の不均一性による周波数のずれを完全には解消することができず、再現性も得られていない。今後、新たな構造のファントムを用いて再現性を確保し、人体でのデータ収集を行う予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在もグリコーゲン試薬を用いたファントム実験を繰り返し行っている状況である。今年度、ファントムによるデータ収集を繰り返し行うことで、グリコーゲン濃度に対応したCEST効果を得ることができた。 検討の結果、グリコーゲン濃度によるCEST効果の直線性の相関は、飽和パルスの印可強度が0.8μT、持続時間が3.0秒のときに最も高い結果が得られた。 RF飽和パルスの印可強度が0.4および0.6μTでは飽和パルスの印可強度が小さすぎて観察できなかった。一方、0.8μTよりも大きい1.0および1.2μTを使用した場合、直接的水飽和効果の影響を受け観察できなかった。これはアミド基を対象としたamide proton transfer (APT) イメージングとは異なる傾向であり、GlycoCESTと同じヒドロキシル基を対象としたglycosaminoglycan CEST (GagCEST)における過去の報告に一致した結果が得られた。 飽和パルスの持続時間においては、検討の中で最も長い設定であった3.0秒の時に最も高いCEST効果が得られ、これは今回作成したファントムでは磁化移動(MT)効果の影響が小さく、APTイメージングでの過去の報告同様、より長い飽和パルス持続時間によってCEST効果が高まったためと考えられた。 今年度、GlycoCESTイメージングの原理に合った妥当な結果がファントム撮像において得られた。しかしながら、いまだ静磁場(B0)の不均一性による周波数のずれを完全には解消することができず、再現性も得られていない。
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今後の研究の推進方策 |
ファントム実験における静磁場(B0)の不均一性による周波数の不安定性が完全に解消でき、再現性を確保できるまでは人体でのデータ収集には移行できないと考えている。 今年度作成したファントムは、昨年度のものよりもB0の均一性を高めた構造ではあったが、グリコーゲン溶液そのものの横緩和時間(T2)が人体とは異なり長すぎたため、B0周波数のズレの影響を鋭敏に受けたと推測された。 今後はグリコーゲン溶液のT2を人体に近づけて再検討を行い、再現性を確保後、人体でのデータ収集を行う予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度までのファントム実験の結果、一定の成果は得られたものの学会発表のみにとどまっている。論文投稿費として計上していた分が残金となった。今後、さらに実験を重ねて解析を行い、論文投稿を目指す。
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