今年度の研究の目的は、「テンサイ由来の細菌ライブラリーの中に、作物生育促進能を持つBradyrhizobium属細菌がいるのか」を確かめることである。 16S rRNA遺伝子のほぼ全長配列を用いて、blast検索と系統解析を行い、テンサイ由来の細菌ライブラリーから、29株をBradyrhizobium属細菌として簡易同定した。しかし、これらの株の中には、Bradyrhizobiaceae科の別な属として(Bradyrhizobium属以外の属細菌として)、同定することが適切な株が、複数含まれていた。これは、Bradyrhizobium属細菌の標準菌株(type strain)でさえも、データベースに登録されている16S rRNA遺伝子のほぼ全長配列が、1262 bpと短い場合があることが、原因であった。これらを考慮し、最終的には、テンサイ由来の細菌ライブラリーから、15株をBradyrhizobium属細菌として同定した。このうちゲノム解析済みの4株を、テンサイに接種した。これら4菌株は、Bradyrhizobium属の異なる「種」としてそれぞれ同定されたものである。テンサイ由来の細菌ライブラリーで、Bradyrhizobiaceae科の新種候補となる株も、テンサイへの接種菌株として使用した。無接種区ならびにテンサイ由来の既知のBradyrhizobium属細菌(標準菌株)を、対照区として用いた。約1ヵ月の栽培後に植物重量を測定し、テンサイ生育促進能を評価した。
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