研究課題/領域番号 |
17K17968
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
新地 浩之 鹿児島大学, 理工学域工学系, 助教 (70770155)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | TLR / TLRアゴニスト / 金ナノ粒子 / アジュバント / ワクチン |
研究実績の概要 |
本研究は、糖鎖抗原・Toll様受容体(TLR)アゴニストを固定化した金ナノ粒子を用いたがんワクチンを開発することを目的としている。 初年度は、1)ジスルフィドリンカーを有するTLR7アゴニスト及び糖鎖の合成と金ナノ粒子への固定化方法の検討に引き続き、2)TLR7アゴニスト固定化金ナノ粒子のin vitroでの免疫増強活性を評価した。 まず、免疫活性化剤となるTLR7アゴニストを金ナノ粒子表面に固定化するために、スペーサー化合物を介してジスルフィドリンカーを修飾した3種類のTLR7アゴニスト誘導体を合成した。合成したTLR7アゴニスト誘導体は、いずれも親水性が低いため、金ナノ粒子に固定化する際には、親水化剤が必要となる。そこで、親水化剤としての役割だけでなく、免疫誘導に重要な役割を果たす樹状細胞をターゲティング可能なマンノースを有する糖鎖を共固定化し、金ナノ粒子を親水化した。この際、TLR7アゴニスト誘導体と糖鎖の固定化密度が、金ナノ粒子の親水性と免疫活性化能に影響を与えることが考えられたため、これらの化合物の固定化密度の異なる複数の金ナノ粒子を合成した。TLR7アゴニスト誘導体と糖鎖の固定化は、MALDI-TOF MSにより確認した。金ナノ粒子の粒径は、透過型電子顕微鏡で測定し、平均7~10 nmであった。また、動的光散乱法により水中での粒径を測定したところ、透過型電子顕微鏡で測定した粒径と類似していたことから、水中で単分散していることが示唆された。金ナノ粒子の免疫増強活性をin vitroで評価したところ、TLR7アゴニスト誘導体の濃度依存的にサイトカインが産生され、TLR7アゴニスト誘導体単体に比べて免疫増強活性が向上していた。また、TLR7アゴニストの固定化密度やTLR7アゴニストを固定化するためのリンカー化合物の構造は、免疫増強活性に大きな影響を与えないことが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度は、ジスルフィドリンカーを有するTLR7アゴニスト及び糖鎖の合成と、金ナノ粒子への固定化方法について検討する予定であったが、計画が順調に進展したため、平成30年度の計画を前倒しして、TLR7アゴニスト固定化金ナノ粒子のin vitroでの免疫賦活化能の評価まで行うことができた。これらの成果で、特許を出願(発明の名称:免疫増強作用を有する金ナノ粒子)し、2017年度生命科学系合同年次大会にてポスター発表(演題:TLR7リガンド固定化金ナノ粒子の調製と免疫増強活性評価)を行い、成果を公表した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、合成したTLR7アゴニスト固定化金ナノ粒子の免疫増強作用をin vitroで評価し、最適なTLR7アゴニストの構造や固定化方法について検討する。その後、TLR7アゴニストとモデル糖鎖抗原を共固定化した金ナノ粒子を合成し、最適なTLR7アゴニスト・糖鎖抗原の固定化量・比率について検討する。また、in vitroでの細胞毒性についても検討し、安全性を評価する。
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