本研究は、高度ICT人材におけるユーザ・センタード・エンジニアリング(UCE)スキルを獲得する効果的な教育プログラムの開発を目的としている。UCEスキルとは、エンジニア自らが自分の視点で課題を発見し、解決するスキルとする。 ユーザーの体験を可視化するエクスペリエンスマップの手法を活用し、「学びのエクスペリエンスマップ」を用いた学習者の学習状況を測定する手法を開発した。これを用いて教育プログラムの設計と実践を行った。学習者の学びを可視化したことで、教員がそれを見て授業調整することができた。プログラムの設計、実践、評価、改善のサイクルを繰り返し、効果的な教育プログラムを開発できた。 コロナ禍の影響により中止になったワークショップ等のかわりに、オンライン形式のワークショップを開発し、実践したことで授業に必要な要素を明確にすることができた。UCEスキルと、美術教育におけるデザインのスキルに共通した重要事項を明らかにできた。(1)自分と他者の視点に交互になり替わりながら考える発想法、 (2)モノに着目すること でコトを発見していく発想法、の2つである。これらの研究結果をまとめ、学会や研究会等で発表することを通じて、俯瞰的に捉えることができた。UCEスキルを身につけたエンジニアが、エンジニアリングを学んだデザイナーや他の専門家と協働することで、ユーザーが本当に必要とする解決策を導くことができると考えられる。地域を対象としたこれまでの課題解決の実践から、他人ごととしてではなくエンジニアが主体的に関わることで、徐々にユーザーのマインドが変化し、双方が納得する解決を導き出すことができた。今後のUCEスキルをもったエンジニアの育成において、主体性を身につけてもらうことが重要である。
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