研究実績の概要 |
具体的に, 大きく2点のテーマに絞って研究を行った. 当該年度においては, 特に以下2点目の研究に注力した. 1点目の研究目的は, 新規企業の参入退出行動と既存企業の投資活動を同時に考慮した動学的一般均衡モデルに基づいて, 財政政策および規制緩和政策の経済成長率・経済厚生への影響を解明することである. 当該年度においては, 分析の出発点として, 企業と労働者間の要素所得配分時における各経済主体の交渉力を明示的に考慮した上で, Dixit-Stigliz (1977) 型の静学的一般均衡モデルを構築し, 企業の相対的交渉力の変化が与える経済厚生への影響を考察した. この研究を``摩擦的労働市場を伴う独占的競争モデルの厚生分析"(2017, 青森公立大学論纂)としてまとめた. 2点目の研究目的は, 公企業と民間企業が競合している混合寡占市場のオープンループナッシュ均衡解とマルコフ完全ナッシュ均衡解の特徴付けを行い, 各均衡解における公企業の民営化政策の政策含意を導出することである. 当該年度においては, 以下3点の進展をみた. (1) オープンループナッシュ均衡解の分析は定性的・定量的に完了した. (2) マルコフ完全ナッシュ均衡の分析については, 線形マルコフ戦略の場合に絞って行った. 非線形連立方程式体系で均衡解が特徴づけられるため, 数値シミュレーション分析を用いて結果を導出した. (3) 静学ナッシュ均衡解とオープンループナッシュ均衡解と比較して, マルコフ完全ナッシュ均衡解では, 民営化の程度と均衡価格について非単調な関係が示されるなど顕著に異なる結果を示した. この研究を``“Mixed Duopoly: A Differential Game Approach"(2017, KIER Discussion Paper)としてまとめた.
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今後の研究の推進方策 |
1点目の研究については, 以下の通り研究を推進する. 摩擦的労働市場を導入したモデル拡張を行い, 財市場と労働市場間の相互作用を明示的に考慮して, 財政政策および規制緩和政策の政策含意を導出する. 次に, 企業間の生産性の異質性を導入したモデル拡張を行い, 経済全体の内生的な効率性変化をも考慮した下で, 政策含意がどのように変更されるかを明らかにする. 2点目の研究については, 以下の通り研究を推進する. 現在はパラメーター数値をある程度絞って逐次的に分析している. 結果の頑健性を高めるためには, 数値シミュレーションのプログラムを抜本的に見直して, より広いパラメーター範囲で数値シミュレーション分析を行う必要がある. また, 価格硬直性の定式化およびその正当性について検討を行う必要がある. 上記の検討課題に対処し, 国内外のセミナーや学会において幅広く研究成果を報告し論文改定を進め, 最終的な国際学術誌への出版を目指す.
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