研究実績の概要 |
1点目の研究目的は, 新規企業の参入退出行動と既存企業の投資活動を同時に考慮した動学的一般均衡モデル(具体的にはStep-by-step型内生成長モデル)に基づいて, 企業参入費用の低下がもたらす経済成長率・経済厚生への影響を解明することである. 当該年度の進展として, 前年度の引き続き, 政策変更前において財市場競争が熾烈でない場合, 参入費用の下方誘導はトレンド経済成長を高められるが, 同時に経済変動の不安定化を招く結果の頑健性について精査した. 2点目の研究目的は, 公企業と民間企業が競合している混合寡占市場のオープンループナッシュ均衡解とマルコフ完全ナッシュ均衡解の特徴付けを行い, 各均衡解における公企業の民営化政策の政策含意を導出することである. 主要結果として, マルコフ完全ナッシュ均衡解における最適民営化度合いが, 他均衡概念における結果と比較して, 顕著に高くなることを明らかにしている. 当該研究は, Journal of Public Economic Theory誌に2019年9月に公刊されており, 当初目標を完全に達成している. 3点目の研究目的は, 新規企業の参入退出行動と既存企業の投資活動を同時に考慮した動学的一般均衡モデルに, 労働市場における摩擦を導入することで,Blanchard and Giavazzi (2002, Quaterly Journal of Economics)で指摘されるような財市場と労働市場間での相互作用を明示的に考慮できるモデルに拡張し,法人税減税, 新規企業の参入費用の緩和, 労働者解雇規制の緩和, 失業保険給付金の減少等の政策含意を導出することである. 当該年度は, 前年度に引き続き, 先行研究のサーベイを徹底的にやり直し, 拡張可能性に適したモデルフレームワークの精査を行った.
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今後の研究の推進方策 |
3点目の研究については, 以下の通り研究を推進する. 摩擦的労働市場を導入したモデル拡張を行い, 財市場と労働市場間の相互作用を明示的に考慮して, 財政政策および規制緩和政策の政策含意を導出する. 次に, 企業間の生産性の異質性を導入したモデル拡張を行い, 経済全体の内生的な効率性変化をも考慮した下で, 政策含意がどのように変更されるかを明らかにする.
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