平成30年度は、アニマル・スタディーズに関する情報収集の成果を、世界文学・語圏横断ネットワーク研究集会(企画セッション「動物と文学」)や比較文学会において発表し、アニマル・スタディーズの概要や課題についての情報提供を行った。 また、東京外国語大学において、東日本大震災後の文学と動物についての講義を担当したことにより、特に災害と動物のテーマに関する調査を進めた。震災後の人と動物の新しい関わりを知るため、宮城県のいわぬまひつじ村を訪問し、家畜が津波の被害を受けた地域の生態系と地域住民のコミュニティを構築している様子を観察した。これに関して、アメリカ・イースタンケンタッキー大学主催のLiving with Animals Conferenceで口頭発表を行った。ここでは、大学で提供されているアニマル・スタディーズ・プログラムのカリキュラムや授業概要についての資料も入手することができた。 2年間の研究活動を通して知り合った研究者との議論の中で、自然災害やアニマル・ツーリズムなど、今日のアニマル・スタディーズの課題に日本文化・社会の視点からアプローチしていく必要性を認識した。今後さらに交流を深め、日本文学やアニマル・スタディーズの学会でのパネル発表を計画しているほか、将来的には日本での国際研究集会の開催を検討している。 他にも、アニマル・スタディーズとアクティビズムの結び付きに着想を得、秋田県立大学「つむぎプロジェクト」を始動した。これは、秋田県内の牧場で不要になった羊毛を活用し、地域のアーティストと協力して作品をつくることで、人・地域・自然をつなげる試みである。羊毛を用いたワークショップや講演会を開催することにより、人と動物の持続可能な関係性について、実践的に考える機会を提供した。本研究課題の取り組みや成果の一部を、学生や教員、学外の一般参加者や牧畜関係者とも共有することができた。
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