研究実績の概要 |
上皮分化を制御する普遍的エンハンサーの同定に先立ち、申請者らが取り組んできたクローディンシグナルに端を発する上皮分化誘導シグナルの全容を明らかにするべく研究を推進した。本研究課題を開始した時点でクローディン接着シグナルがレチノイン酸受容体(RAR)に帰着するという結果を得ていたため、それが具体的にどのような機構によるものかを探索した。まず各種阻害剤を用いて検討し、上皮分化誘導シグナルにはAKTが関与するという結果を得た。続いてバイオインフォマティクスによりRARのAKT依存的セリンリン酸化残基を推定し、抽出された8箇所全てにおいてアラニン置換によるリン酸化不応体を作成した。これらのクローンに対してクローディン発現により上皮分化を誘導したところ、X番目のセリン・アラニン置換体では上皮分化が全く観察されず、そのセリン残基が上皮分化誘導に必須であることが明らかとなった。驚くべきことにこのセリン残基は脊椎動物から無脊椎動物まで左右対称動物の間で種を越えて広く保存されており、さらには他の核内受容体スーパーファミリーにも分布していた。以上より本研究課題において同定しようとするエンハンサー配列は、このセリン・リン酸化を受けたRARが転写因子複合体のコアとなって結合している可能性が推察された。 また本研究では将来的にTALEN法を用いたエンハンサーの改変による機能欠失を予定しているが、それと技術的に関連して、TALEN法を用いた成体ゼブラフィッシュで機能するコンディショナルノックアウト法を世界に先駆けて発表した(Sugimoto et al., 2017a)。また申請者がTALEN法により遺伝子ノックアウトした動物モデルを使用した複数の研究が発表された(Sugimoto et al., 2017b; Shi et al., 2017; Hui et al., 2017)。
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