当初予定していた上皮分化エンハンサーの同定に先立ち、エンハンサーに結合する転写因子複合体の解析を目指すこととした。CLDN6の対合に端を発するシグナルが、SFK/PI3K/AKTを介してレチノイン酸受容体(RAR)の未報告のセリン残基をリン酸化し、リガンドに対する感受性を高め、コリプレッサーの乖離を促すことで幹細胞の上皮分化を誘導していることを解明した。以上を年度末に査読付き英文論文として学術誌に投稿中である。また上記のセリン残基は脊椎動物のRARのみならず核内受容体スーパーファミリーの1/3程度に広く保存されていることから、上皮分化に加えて組織発生、がん、および臓器再生など、多細胞生物の様々な生命現象に関わる可能性が考えられ、本研究で明らかになった新規核内受容体活性化機構の実験病理学への展開が期待される。
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