本研究は、里親たちを中心とする家庭養護養育者の経験する困難がいかなる社会文化的文脈より生起しているのかを社会学的に解明し、国際比較から日本の特性を明らかにすることを目的とする。本研究をとおして、里親をはじめとする社会的養護一般への支援の示唆を得るほか、ケアの公私分担の議論に里親養育研究を位置づけ展望をひらくことを目指すものである。 本研究は国内調査と英国でのフィールド調査にもとづくものに大別される。初年度は、国内調査、分析枠組みに用いる文献の収集に重きをおいた。とくに、養育者の家庭で社会福祉事業として子どもを育てる特性に着目し、小規模住居型児童養育事業(ファミリーホーム)を中心的な対象とした。2017~2019年度を通じて全国のファミリーホーム21ケース31人を訪問し、インタビュー調査とホームの見学の機会を得た。2018年度は、予定していた中心的な課題である国内の追加調査をおおむね終え、データ分析に軸足を移し、一部成果を国内学会にて報告したうえで本プロジェクトの中間報告として論文化した。国内調査の分析はその後も継続して行い、2020年度には国際学会でも報告したほか、複数当該調査データを用いた原稿が刊行された。 アレンジの都合などからやや遅れた英国でのフィールド調査は、2019年夏に実施できた。帰国後、調査報告会の実施、成果の一部を2019・2021年度に論文にまとめた。2020・2021年度は新型コロナウイルス感染症の流行、また出産による研究の一時中断のため、海外調査を重ねることはかなわなかった。その分、再訪の機会に土台となるような文献収集は続け、関連テーマでの監訳を担うなど国内でできる作業を継続した。 補助期間は終了するが、執筆中の論文が残っており、投稿を行う予定である。本研究を引き継いで新たな科研にも発展したため、その研究の展開に今後も尽力する。
|