PARーaPKC細胞極性制御因子群は、非対称な形態を形成する細胞(上皮細胞、神経細胞、非対称分裂を行う幹細胞など)において、非対称な細胞膜ドメインを形成するために必要な因子であり、動物種間や組織種間にわたって普遍的に保存された因子群である。PAR3はその因子一つで、上皮細胞では細胞間接着部位に局在して機能する。本研究では、新規に同定したPAR3のリン酸化修飾とその脱リン酸化機構に着目し、これによるPAR3の局在制御機構を明らかにした。 まず、このリン酸化部位はPAR3の結合タンパクとして同定したASPP2がリクルートするPP1というフォスファターゼによって脱リン酸化されることを明らかにした。このリン酸化部位を変異させたSA変異体PAR3は細胞質内に塊状の構造を形成することから、脱リン酸化によってPAR3分子自身が集積(クラスタリング)しやすくなることがわかった。野生型PAR3-GFPとPAR3_SA-GFPのターンオーバー(分子の交換)をFRAP法で比較したところ、SA変異体の方が入れ替わりが遅かったことから、非リン酸化型PAR3は細胞間接着に安定局在していることが示唆された。また、SA変異体PAR3はタイトジャンクション領域よりもベーサル側であるラテラル膜にも異所的に局在し、タイトジャンクション形成領域をよりベーサル側であるラテラル膜へと伸長させた。これら結果から、PAR3が細胞間接着部位に濃縮する機構として、脱リン酸化により起こる局所的な集積があることが示唆された。
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