研究課題/領域番号 |
17K17997
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
増田 寛之 富山県立大学, 工学部, 講師 (50586336)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ロボット / 全天球カメラ / 接近感指標 |
研究実績の概要 |
H29年度は,全周囲の自車に接近する物体に対して人の感じる危険感を表す指標を表現することを目的として,(1)画像中の物体の移動ベクトルから接近する物体の検出方法の確立,(2)自車に接近する物体に対する危険感を表す指標の構築,そして(3)人に注意を促すためのロボットのモーション開発を行った. (1)画像中の物体の移動ベクトルから接近する物体の検出方法として,全天球カメラを用いて,画像中の物体の面積変化及び画像上における物体の移動ベクトルを検出した.本研究では,周辺の任意物体の色を検出する事で物体の面積とし,認識した色の重心移動量を用いて物体の移動ベクトルとした. (2)自車に接近する物体に対する危険感を表す指標の構築として,(1)で検出した物体の面積変化と移動ベクトルを用いて,従来からある接近感指標KdBを拡張し,全方向から接近する物体の接近度合を表現するモデルの構築を行った.物体の面積変化からKdBを求め自車への接近ベクトルとみなし,移動ベクトルを自車から離れるベクトルとみなし,その合成ベクトルから自車への接近度合を感覚量として定義した.その結果,自車を横切る軌道を通る物体等に対して,危険感が上昇すること無く人の感覚と一致する値の変化を示すことができた. (3)人に注意を促すためのロボットのモーション開発として,人型ロボットSotaを試験車に搭載し,(2)の結果に基づいて危険を促すモーションを開発した.実際に搭載すると,細かい動きは認識が困難であったため,ややオーバーアクションと感じるモーションを作成した.一方,動作や発話においてコマンド送信から動作まで遅れが生じており,現状のシステムではタイミング良く所定のモーションを実行する事が困難である事が分かった.今後,ロボットの変更を含め検討する必要があると考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H29年度の計画(1)画像中の物体の移動ベクトルから接近する物体の検出方法の確立,(2)自車に接近する物体に対する危険感を表す指標の構築,(3)人に注意を促すためのロボットのモーション開発について,概ね順調に進んでいると考えている. (1)画像中の物体の移動ベクトルから接近する物体の検出方法の確立については,当初オプティカルフローを用いて検出する予定であったが,オプティカルフローは計算時間がかかりすぎてリアルタイムでの処理が困難であった.そこで,球面画像上の物体の面積変化及び物体の移動量の二つを用いることで,現実的な処理時間で画像中の物体の接近度合と移動量の表現ができ,当初必要とする情報を得ることができた. (2)自車に接近する物体に対する危険感を表す指標の構築については,当初TTCを算出する事を考えていたが,相対速度が0である時に適切な指標値を出力できない問題があった.そこで,接近離間状態評価指標KdBを適用することで,この問題を解決できた.また,物体の移動を接近ベクトルと離れるベクトルの合成ベクトルとして表すことで自車に接近する物体に対する危険感を表現できた. (3)人に注意を促すためのロボットのモーション開発について,人が認識しやすいようややオーバーアクションと感じるモーションを複数作成した.一方,動作や発話においてコマンド送信から動作まで遅れが生じており,現状のシステムではタイミング良く所定のモーションを実行する事が困難である事が分かった.今後,ロボットの変更を含め検討する必要があると考えているが,今年度については概ね順調に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
現在,予定通り順調に進んでいると考えているため,H30年度は計画通りロボットのモーション開発を中心に実施する予定である.具体的には,車両システムの作動状態を人に推測させる上で効果的なモーションの開発及び適切なタイミングを推定する手法の開発に取り組む. あわせて,検証実験を行うために必要な要素となる自動走行制御による衝突回避制御を実装する.特に,危険感指標に基づいて接近感の高い物体に対して,衝突回避を行う車両制御アルゴリズムを開発し,実装を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
学術論文の掲載費用として約15万円見込んでいたが,H29年度中に投稿した学術論文が当該年度中に掲載されずH30年度にずれ込んだため,次年度使用額が生じた. 学術論文はすでに採録が決定しているため,H30年度中に請求した助成金と合わせて論文掲載費として使用する予定である.
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