研究実績の概要 |
水圏生態系の微生物ループにおいて細菌捕食性原生生物が原核生物を摂餌することで輸送される有機物量を見積もるための新しい手法開発と現場環境での実証が本研究の目的である。現場環境に即した見積もりを導出するためには、環境中に生息する微生物を用いて、室内培養実験による再現性の高い実験により捕食に関する生理を試験することが重要である。H30年度は、H29年度に若狭湾に面する海水湖(日向湖)から単離培養した原生生物3種類(アメーバ様細胞1株, 鞭毛虫様細胞2株)を対象に、系統的位置を決定するとともに、蛍光ビーズを用いた捕食速度実験を実施した。18S rRNA遺伝子配列を決定し分子系統を調べたところ、原生生物3種はBicosoecida科, Vannella属, Neobodo属であった。また、蛍光ビーズを餌とした捕食速度を、3種類の粒子径(0.1, 0.5, 1.0 micro m)で比較したところ、いずれの原生生物も0.5 micro mのビーズを最も多く捕食した(2.4-13.5 beads/cell/h)。さらに、3種間で蛍光ビーズの取り込み速度は有意に異なり、Vannella属、Neobodo属、Bicosoecida科の順に高かった。また、最も捕食速度の高かったVannella属のみ食胞内に複数(2-4個)のビーズを取り込んでおり、原生生物の種類または捕食形態により餌粒子の取り込み速度が異なることが明らかとなった。また、現場海水中の細菌捕食性原生生物の網羅的な群集構造解析は若狭湾にて実施した。若狭湾より餌となる原核微生物の単離株(10種類)も取得した。
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