研究課題/領域番号 |
17K18003
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研究機関 | 静岡文化芸術大学 |
研究代表者 |
天内 大樹 静岡文化芸術大学, デザイン学部, 講師 (40615035)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | グローバル・ヒストリー / モダン・ムーヴメント / 近代建築 / 教育機関 / バウハウス |
研究実績の概要 |
本研究はモダン・ムーヴメントの日本への導入過程を教育機関の成り立ちを通じて探る試みである.公表済みの著作物のサーベイを通じて,まずは各機関の発展過程を整理した.その中には当初計画していた京都工芸繊維大学,千葉大学工芸学部,日本大学芸術学部に加えて,東京帝国大学第二工学部などが挙げられる.比較対象として,現代の芸術系大学を新たに取り上げることにした.東京藝術大学,京都伝統工芸大学校,金沢美術工芸大学,富山大学芸術文化学部などである.これらの大学に関しては現地に出向いて施設や資料を閲覧する機会を得た.これについては部分的な報告をまず学内紀要で行う予定である. また,モダン・ムーヴメントをグローバルに捉える上で他国との比較も可能である.先進国やアジアなどに関してはすでに国内で資料が出始めており,文献調査でかなりの部分をカバーすることができる.一方,機会を得てラトビア共和国を訪れて現地の建築状況を調査し,日本の状況とは異なる受容の過程を目の当たりにすることができた.アール・ヌーヴォー建築が有名な同国であるが,世界遺産として登録理由に挙げられている木造建築がこれに並行しており,さらにはソ連占領期になって流入したモダン・ムーヴメントにより,首都リガの郊外住宅地の大部分がソ連型アパートメントで形成されている.この過程を整理するにあたって,学内公開講座での発表の機会を利用した. さらに,モダン・ムーヴメントの国内における展開として,申請者の研究の出発点ともなっている分離派建築会に関してシンポジウムを企画・実行することができた.博覧会という稀有な場で実験的な建物が数多く建てられたこと,また建築家の位置付けという点でモダン・ムーヴメントを胚胎していたことなどを同席上で発表した.また静岡県内の戦後建築の調査を通して,戦後改めて近代建築が都市の隅々に普及していくさまを確認することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラトビアにおける建築との出会いを通じて,日本における建築の展開をかなり相対化することができた.また,教育機関の経緯の調査において,公表され図書館などに所蔵されている文書だけではなかなか把握できない内容まで立ち入ることができた.またシンポジウムなどを通じて途中経過をすでに公開している.公開の機会をさらに利用して,研究成果を積み上げていきたい.一方,日本デザイン機構が活動を終えてしまったため,聞き取りなどの機会を逸さないよう調整が必要である.
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今後の研究の推進方策 |
各教育機関における建築・デザイン教育の体制や理念についてさらに調査を続けていきたい.具体的には,九州芸術工科大学(九州大学芸術工学部),東北芸術工科大学などを考えている.また教育機関という概念を広義に捉えて,商工省工芸指導所などを考察する必要があるかもしれない.特に九州芸術工科大学は千葉大学とともに小池信二の足跡が残されているはずで,活動を終了した日本デザイン機構のメンバーとともに聞き取りを進めていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
端数によるもの.次年度に併せて利用する.
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