本研究課題の主要点である「新生児期にのみに備わっている神経細胞(ニューロン)の傷害後の再生能力とその制御メカニズムの解明」については、これまでに十分な研究成果が出ている。これまでにマウス脳傷害モデルを用いた解析から、以下の知見を見出すことに成功した。①新生児期では脳傷害後に、側脳室外側に存在する脳室下帯の神経幹細胞から産生された未熟な新生ニューロンが招待しない放射状グリアを足場を用いて効率よく傷害部へ移動する、②放射状グリア足場を模倣した生体材料を脳傷害部へ移植することによってニューロンの移動、成熟ならびに神経学的機能の改善が促進することができる。 実験については、マウス脳がヒト脳と構造・サイズ・発達経過など大きく異なることを考慮し、今後新生児脳傷害の新たな治療法の開発のために、ヒト脳により近い動物種を用いた解析が必要と判断した。これまでの実績を発展するため、ヒトの脳に構造が極めて類似した動物種であるブタ新生仔脳を用いて、新生児脳が持つ再生能力を検討を行った。新生仔ブタ脳傷害モデルを用いている施設と定期的に会議・意見交換を行い、適切な新生仔ブタの脳傷害モデルを確立して免疫組織学的解析を行った。脳傷害後において脳室下帯における細胞の増殖および、新生ニューロンの産生はある程度増強されることを見出した。
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