研究課題/領域番号 |
17K18008
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
細谷 隆史 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 助教 (40779477)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リグニン / バニリン / テトラブチルアンモニウム / 酸素 / アルカリ |
研究実績の概要 |
本研究は、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(NBu4OH)中でのリグニンからの高選択的バニリン生産に関するものである。本年度は、NBu4OH中におけるスギ木粉中のリグニン分解挙動を詳細に検討し、バニリンを最大収率で与える反応条件の模索を行った。 スギ木粉をリグニン試料とし、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(NBu4OH)水溶液中で分解したところ、反応温度120℃、反応時間72時間でバニリンの最大収率14%(クラソンリグニンベース)が得られることがわかった。また同様の反応条件で、ソーダリグニン、磨砕リグニン、リグニンンスルホン酸などの他のリグニン試料からも、NaOHなどの単純なアルカリと比較して、高選択的にバニリンが得られることが判明した。以上の結果は、学術論文として、ACS Sus. Chem. Eng. 誌に掲載された。 反応条件に関する更なる検討結果より、バニリン生成には酸素によるリグニン側鎖の酸化が必要であることが判明した。本知見を基に、上記のNBu4OH中でのスギ木粉からのバニリン生産を酸素雰囲気下で行ったところ、72時間必要であった反応時間が4時間まで短縮された。さらに、反応系にNaOHを添加することで、短い反応時間を維持した状態での収率の向上に成功し、反応時間4時間において、バニリン収率23%を達成した。 以上の本年度の検討より、スギリグニンからのNBu4OHを用いたバニリン生産において、反応温度120℃、酸素雰囲気下、NaOH添加剤の添加を最適条件として提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請当初での1年目の目標は、反応条件の最適化であった。「研究実績の概要」で述べたように、NBu4OHを用いたスギ木粉からのバニリン生産における最適条件の提案に成功しており。期待した通りの結果が得られたと言える。
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今後の研究の推進方策 |
本反応では、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が同濃度のNaOH溶液より、バニリン生成において高い選択性を示す。本事実は、バニリン生成反応を何らかのメカニズムでテトラブチルアンモニウムイオンが促進していることを示唆する。そこで、次年度は反応の更なる効率化を行うための基礎的知見を得ることを目的として、リグニンモデル化合物を用いたバニリン生成機構の解明と、そこでのテトラブチルアンモニウムイオンの役割を解明する。
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