研究課題/領域番号 |
17K18009
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
横道 誠 京都府立大学, 文学部, 准教授 (60516144)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 独文学 / 伝承文学 / 学問史 / 比較文化 / 思想史 |
研究実績の概要 |
本研究は、グリム兄弟のメルヒェン注釈を改定したボルテおよびポリーフカの注釈(以下『BP』と略記)に注目し、その学問史的位置を考察するものである。 2018年4月に刊行された『「神話」を近現代に問う』(勉誠出版)では、本研究計画で予定していた課題の多くを成果として公開することができた。具体的には、ヴィルヘルム・グリムがゲルマン民族の伝統的な刑罰と見なした「釘樽の刑」に関する『BP』の見解、『3枚の蛇の葉』というメルヒェンに関する『BP』の見解である。この書物については2018年8月に合評会が予定されている。 グリム兄弟の学問的伝統が『BP』など後世の研究にどのように反映されたかについて国際会議で発表するため、国際比較神話学会(International Association for Comparative Mythology)での口頭発表に応募し、採用された(2018年6月1日発表予定)。これはミヒャエル・ヴィツェルらによる「世界神話学」の構想を受けて、グリム兄弟の学問的伝統を再考するものである。また2017年10月に野口芳子教授(梅花女子大学)を招いてミニ・シンポジウムを開催した。内容はグリム兄弟の学問的伝統を批判したヴェーバー=ケラーマンに関するものであった。 その他、ミネルヴァ書房で企画中の『ドイツ哲学・思想事典』(仮題)に専門学識協力者および執筆者として関わっており、本研究の成果を反映させている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画では平成29年度にヴィルヘルム・グリムがゲルマン民族の伝統的な刑罰と見なした「釘樽の刑」に関する『BP』の見解を考察する予定であった。また平成30年度には『3枚の蛇の葉』というメルヒェンに関して、『BP』の見解を考察する予定であった。しかし、両方の計画はおおむね達成され、勉誠出版の『「神話」を近現代に問う』(2018年4月刊行)で公表された。 「研究実績の概要」で前述した国際比較神話学会での口頭発表(2018年6月予定)、ミネルヴァ書房で企画中の『ドイツ・哲学思想事典』(仮題)のほかに、「グリムと民間伝承研究会」での口頭発表(2018年5月)、研究代表者を中心として開催される学際シンポジウム(2018年7月予定)、ハンス=イェルク・ウター教授(伝承文学の国際比較研究の世界的リーダー)の講演会(2018年10月)などの企画が進んでおり、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、当初平成31年度に予定していた内容(グリム兄弟がドイツのメルヒェンをゲルマン神話から派生したものと見なしたことの是非)の検討に移り、特に現在の「世界神話学」を念頭において、『BP』の学問史的位置づけを考察する。 平成31年度は、平成30年度の課題をさらに深めていく。具体的には「メルヒェンの女王」とも呼ぶべき「灰かぶり」(シンデレラ)を対象にする。グリム兄弟(ヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリム)はそれぞれ「灰かぶり」についての考察をおこなったが、筆者は既に、互いの情報交換は十全とは言えなかったことを論じた。それでは、グリム兄弟ふたりの著作の様々な成果を総合した『BP』はどのような解説をおこなったのか。このことを、それ以後の研究も踏まえた上で、多角的に考察していく。 交流のある研究仲間が増えつつあるため、適宜アドヴァイスを仰ぎながら、さらに研究を深めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでに購入した図書に加え、譲渡を受けた貴重図書もあり、研究環境の整備が進んでいた。また平成30年度に国際学会での発表や研究代表者を中心にした学際シンポジウムの企画を進めており、そちらで経費が必要になることも想定された。以上から、全体的に支出を抑えることができ、次年度使用額が生じた。次年度は、上に記した企画にかかる費用として使用していく予定である。
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