2017年度、iPS 細胞から分化誘導し、大脳皮質の形成過程を模倣した神経細胞凝集体にIL-6を投与することにより、JAK/STATシグナルの活性化が惹起され、CTIP2陽性(神経細胞)細胞数の減少、GFAP 陽性(アストロサイト)細胞数の増加といった、「妊娠期の母体免疫系の活性化による自閉症スペクトラム障害」の再現と、フラボノイドの一種であるLuteolin投与による、STAT3リン酸化阻害を介した上記表現型の回復を示した。さらに、Luteolinの過量投与が神経細胞のアポトーシスを惹起することを明らかにし、上記内容で論文発表を行った。 2018年度は、上記の「母体免疫系の活性化による自閉症スペクトラム障害モデル」を用いて、表現型を回復するフラボノイドのスクリーニングを施行予定であったが、上記分化誘導系では60日間を要し、多数の化合物のスクリーニングには適さないことから、より簡便な分化系の構築に着手した。しかし、より短期間での神経細胞とアストロサイトを含む大脳皮質モデルの構築には至らなかった。 また、自閉症スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害、統合失調症発症者におけるレベルの不均衡や、フラボノイドと同様に抗炎症作用が報告されている、多価不飽和脂肪酸に属するDHAについて、治療薬の候補になり得るか、上記「妊娠期の母体免疫系の活性化による自閉症スペクトラム障害モデル」に投与を行ったが、表現型の回復は得られなかった。
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