研究課題/領域番号 |
17K18012
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
松原 勤 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (20628698)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | FXR / 肝星細胞 / 細胞老化 |
研究実績の概要 |
慢性炎症に伴って生じる活性化肝星細胞ならびに老化肝星細胞は肝発がんに寄与すると考えられている。事前研究で、胆汁酸受容体Farnesiod X receptor (FXR)は肝細胞よりも肝星細胞の方が発現量が高い事が分かった。しかし、肝細胞での生理機能についてよく調べられているが肝星細胞での生理機能についてほとんど知られていない。本研究は、肝星細胞FXRの機能に着目して、肝線維化・肝発がんの分子病態解析を行うことにした。 ヒト肝星細胞HHSteCに構造の異なる2種のFXR活性化物質GW4064とオベチコール酸を添加すると遺伝子発現パターンが異なっていたため、まず、これらの分子機構の差異を調べることにした。Flag-FXRをHHSteCに過剰発現させ、抗Flag抗体-マグネットビーズで共沈降させると、SDS-PAGE後のゲルを銀染色すると75~100kDa付近にFXRと結合するタンパク質Xを発見した。このタンパク質XはGW4064添加時にはFXRと結合が消失することが分かった。現在、タンパク質Xの分子種を同定するとともに、オベチコール酸添加時もタンパク質XとFXRの結合が消失するか検証する。加えて、GW4064は、オベチコール酸と異なり、肝星細胞の細胞老化で発現が上昇する遺伝子を誘導したため、老化肝星細胞と比較して、その分子機序を解析を行っている。また、昨年に構築されたCol1A1-Cre FXR-Floxマウスの肝発がん率を観察している。肝発がん率に変化が認められた場合、肝発がんにおける肝星細胞FXRの機能を解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
購入した抗FXR抗体の抗原認識特異性が低かったため、Flag-FXR過剰発現系で共免疫沈降を行うことにした。FXRと結合するタンパク質Xの分子種を同定できていないが、タンパク質Xの発見までできた。また、他の培養細胞を用いた実験ならびに動物実験も計画通り進んでいる。概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
マススペクトロメトリーでタンパク質Xの分子種を同定し、タンパク質Xの機能を解析する。また、GW4064が老化関連遺伝子を誘導する解析し、オベチコール酸との機能の差異を明確にする。 Col1A1-Cre FXR-Floxマウスにおいて肝がんの自然発症を経過観察するとともに、FXR欠損マウスで認められる血中胆汁酸値(特にデオキシコール酸値)の上昇を模写する実験系で肝がんの発症する頻度を、各マウス(Alb-Cre FXRFloxマウス、Lys-Cre FXR-FloxマウスならびにCol1A1-Cre FXR-Floxマウス)で観察する必要がある。デオキシコール酸は肝星細胞を老化させ肝発がんに寄与すると推定されており、デオキシコール酸添加食負荷が血中胆汁酸の上昇を模写する実験系として妥当であると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
共免疫沈降に使用する抗体(システム)の変更のため、タンパク質の同定に必要な試薬ならびに解析費を翌年度に実施することにしたため。 また、国際学会に出席する予定であったが、大学の講義等の関係でキャンセルし、翌年度以降に国際学会に出席することに変更したため。
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