研究課題/領域番号 |
17K18016
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中村 英人 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 特任講師 (00785123)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 植物バイオマーカー / 植物テルペノイド / 分子化石 / 古植生解析 / 古植生指標 / 化合物ライブラリ / 白亜紀 |
研究実績の概要 |
白亜系堆積岩・植物化石中の植物有機分子化石ライブラリ作成のため、北海道大夕張地域・苫前地域・穂別地域・三笠地域の堆積岩と植物化石を採取・収集した。さらに、和歌山広川町・徳島県勝浦町・高知県香北町の下部白亜系堆積岩と植物化石を採取して順次分析している。 対象化合物が豊富に含まれ夾雑物の影響の少ないピークを含む試料を選定し、マススペクトルをライブラリに登録したが、下部白亜系などの熱熟成の進行した試料ほど環式テルペノイド化合物が相対的に減少し、植物由来テルペノイド化合物の純粋なマススペクトルを得るのが難しくなる傾向にあった。比較的未熟成な苫前地域の堆積物や、植物由来有機分子の卓越する炭層や植物化石から良好なマススペクトルが得られた。既存の古植生指標の計算に用いる植物由来の脂肪族・芳香族テルペノイドの登録は概ね完了し、頻出する非植物由来分子化石や顕著な未同定化合物についても仮登録することで200種以上の化合物を検索可能としている。 複数メーカーの質量分析データを解析できるAnalyzerProソフトウェアを導入し、ターゲット解析ワークフローの検討を行った。複雑に重なったピークから個別の化合物のマススペクトルを取得するデコンボリューションのパラメータは、化合物ピーク数の比較的少ない表層堆積物の測定結果で調節し、次いで白亜系堆積物に最適化した。その上で、植物有機分子化石ライブラリを検索することで代表的な植物分子化石を同定できることを確かめた。しかし、マススペクトルのみを用いた自動同定は偽陽性が多かった。保持指標(RI値)を併用することで偽陽性の少ない半自動解析を目指し、登録済化合物の保持指標の算出を進めた。バイオマーカー分析で標準的な (5%-フェニル)-メチルポリシロキサン相当のカラムでの分離条件を検討し、アルカン標準化合物を同一条件で測定、またはスパイクしてRI値を求めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年代・熟成度・堆積環境の異なる白亜系堆積岩や植物化石の試料の確保と分析は順調である。 測定結果の手動解析によるライブラリ構築も、既存の古植生指標の計算に用いる代表的な分子化石のマススペクトルを網羅した。一方で、半自動解析の精度向上に重要なRI値は、GCの分離条件が確定後、各化合物について十分な測定例を蓄積して信頼性のある値を報告する予定である。中極性カラムとの比較など、分離条件の検討を年度後半まで継続したため、ライブラリへのRI値の登録が完了していない。AnalyzerPro を用いた解析による結果も出始めたが、公表には至っていないため。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、おもに北海道白亜系蝦夷層群の堆積岩と植物化石を対象に、1) 幅広い年代・熟成度・堆積環境を代表する試料セットを採取し、有機地球化学分析を行う。 2) 分子化石の網羅的解析により植物有機分子化石ライブラリを作成する。3) 植物有機分子化石ライブラリとデータ処理ソフトを組み合わせた(半) 自動解析ワークフローを確立し (ターゲット解析系)、さらにノンターゲット分析により分子化石相データを蓄積し、分類群・続成・堆積環境などの特徴に関連する化合物の探索と指標の評価を行う。1)~3) に関して、 平成30年度には、 1. ライブラリ拡充のため、年代にかかわらず植物由来有機分子の保存が良好な堆積岩・植物化石試料の確保と分析を継続する。 2. RI値を含めたライブラリを利用した解析プロトコルを確立し、ライブラリとリファレンスとなる解析例と共に公開する。 3. ライブラリ登録化合物以外のピークも含めたノンターゲット分析により、新たな古植生・古環境・熟成度指標を検討する。確立した解析ワークフローが、分析条件などの異なる既存の測定データの再解析にどの程度適用可能かについても評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノンターゲット分析用に多変量解析ソフトウェア SIMCA の導入を想定していたが、導入したAnalyzerPro 内蔵の多変量解析機能が充実していたため同等の支出は不要となった。余った予算で、GC-MS測定までの前処理効率化のためガスクロマトグラフ装置と関連部品を購入したが、一部は次年度に繰り越した。繰り越し額は、次年度以降に計画している地質試料の分析に用いる試薬や溶媒の費用に充てる予定である。
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