研究課題/領域番号 |
17K18018
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研究機関 | 神戸市外国語大学 |
研究代表者 |
紺野 達也 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (00506157)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 琉球 / 漢文学 / 蔡大鼎 / 冊封使 / 離別詩 |
研究実績の概要 |
本研究は文学・歴史学などの学術分野や中国学・琉球学といった各国家・地域研究を横断した学際的研究の一つとして、前近代最末期の琉球を生きた蔡大鼎の 漢詩文について、文献調査・フィールド調査を併用して実証的に調査・分析し、彼の日本・中国・琉球に関する知の形成と集積の諸相を解明するものである。 令和元年度は、前年度に引き続き、『ビン山游草』『続ビン山游草』『北燕游草』か ら書名、作品名、漢詩文の引用、日本・中国・琉球の地名、歴史的人物の名などを抽出し、それらのデータについて分析した。特に、それらの出典、特に蔡大鼎が用いたであろう書籍・資料(漢文・和文ともに含む)等を検討した。さらに『北上雑記についても同様の作業の分析を開始した。また、令和2年3月に蔡大鼎の詩文に登場する沖縄県那覇市・座間味村・渡嘉敷村にて実地調査を行った。 その研究成果の一部は、令和元年6月に「日本と東アジアの漢詩文の交流ー中国文明の伝播という視点からー 」(平成30年度共同研究班「グローバル時代の新しい教養ー未来に向けた日中交流と日中相互関係」、神戸市)、同年8月に「赴日使節與日本文人之間詩文交往-以渤海國與琉球國之使節爲例-」(中華文明傳播史系列工作坊 中國古典文學在東亞傳播與接受、北京市)、同年11月に「蔡大鼎の離別詩について」(第17回中琉歴史関係国際学術会議、青島市)として口頭発表した。なお、11月の発表内容は学会開催時に配付された論文集に論文が掲載された。また、同じく11月に南京大学にて「琉球漢詩文的現況ー以蔡大鼎為中心ー」と題する学術講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度も、前年度に引き続き、蔡大鼎の漢詩文集からの書名、作品名、漢詩文の引用、日本・中国・琉球の地名、歴史的人物の名などのデータの抽出と分析が順調に進んでいる。また実地調査でより認識が深まった。それらに基づく研究成果の一部、特に蔡大鼎の離別詩については第17回中琉歴史関係国際学術会議で口頭発表するとともに学会論文集において刊行していること、琉球使節の日本における詩文の交流については「日本と東アジアの漢詩文の交流ー中国文明の伝播という視点からー 」、「赴日使節與日本文人之間詩文交往-以渤海國與琉球國之使節爲例-」において口頭発表していることから、研究はおおむね順調に進展していると思われるためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度・30年度・令和元年度に収集したデータについて引き続き分析する。今年度は特に『北上雑記』について、書名、作品名、漢詩文の引用、中国の地名、歴史的人物の名などを抽出し、そのデータを分析する。なお、関連して北京市の地域に関する現地調査を実施する予定であるが、これについてはコロナウィルスの流行の情況等を鑑み、慎重に検討したい。 また、今年度は最終年度であるため、これまでの研究成果を「琉球王国最末期の漢文学者・蔡大鼎の知の形成・集積」という統一的な視点、展望のもとに改めて整理、検討する。さらにそれを通して「東アジアの近代」と不可分である「近現代の琉球学・沖縄学」が遺してきた課題を明確にし、今後の研究の展望を示す。その他、これまで作成した蔡大鼎の漢詩文の訳注を再点検し、その刊行の準備をする。
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次年度使用額が生じた理由 |
主として、旅費が当初の計画から節減できたことによる。これについては令和2年度の消耗品(図書)購入に充当する。
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