研究実績の概要 |
本研究は日本人2型糖尿病患者コホートであるJPAD研究コホートを用いて,低用量アスピリン療法が日本人糖尿病患者にどのような影響を与えるか,特に糖尿病患者に多いとされる発癌・癌死亡に与える効果を検証する研究である. 平成29年度はJPAD研究コホートの追跡調査(2017年追跡調査)を実施するとともに,2015年に実施した2015年追跡調査結果を元に解析を実施した. 2015年追跡調査結果を元に,低用量アスピリン療法が日本人糖尿病患者における発癌抑制効果を有するかについて解析を行った.2015年追跡調査では,解析対象患者2536名中318名において癌の発症を,123名において癌による死亡を認めた.JPAD研究開始時(2002年~2005年登録)の低用量アスピリン療法の割付(2015年時点での割付遵守率:85%)に従って解析を行うと,低用量アスピリン療法による発癌抑制効果・癌死亡抑制効果は認められなかった(発癌:ハザード比 0.92, 95%信頼区間 0.73-1.14,癌死亡:ハザード比 1.10, 95%信頼区間 0.77-1.57).年齢・性別での層別解析では,低用量アスピリン療法による発癌抑制効果には性差を認めなかったが(男性:ハザード比 0.92, 95%信頼区間 0.69-1.21, 女性:ハザード比 0.89, 95%信頼区間 0.61-1.28),65歳以上/未満で解析を行った場合,65歳未満において発癌抑制効果を有する傾向を認めた(65歳以上:ハザード比 0.98, 95%信頼区間 0.75-1.28,65歳未満:ハザード比 0.67, 95%信頼区間 0.44-0.99).本研究結果は平成30年度に日本糖尿病学会で発表することが確定しており,論文を英文誌に投稿している. また,2017年追跡調査を実施した.2017年追跡調査は平成29年7月時点の発癌状況について調査を行った.2017年追跡調査は平成29年3月までに一次調査が終了し,現在は不備のある情報を補完する目的で二次調査を実施している.
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