研究課題/領域番号 |
17K18024
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
松下 祥子 和歌山県立医科大学, 先端医学研究所, 特別研究員 (80791441)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アンドロゲン / 外生殖器 / 性差 / 遺伝子制御 |
研究実績の概要 |
本研究は、性ホルモンの標的の尿道形成制御因子 MAFB 及ひ新規外生殖器サイズ制御因子である転写因子X を軸として、MAFB及びXの下流の機能因子の同定に向けたマウス外生殖器を用いた網羅的解析、下流因子の機能解析、 下流因子の遺伝子発現制御解析を行う。このような研究は、発生医学、内分泌学、遺伝子発現制御、ホルモン依存性の癌細胞研究、病態学を横断する学際研究として、極めて突出した成果が期待できる。平成29年度は特にまず、既に申請者が特定した外生殖器における 性ホルモンの標的の尿道形成制御因子 MAFB 及び新規外生殖器サイズ制御因子転写因子 X の下流標的因子を明らかにするために、MAFBとXの雄特異的な発現が確認される E15.5 のマウス外生殖器原基を材料とし、MAFB 及びXに対する抗体を用いて ChIPシークエンス(ChIP-seq)を行い、MAFB 及び転写因子 X の下流の標的因子を探索する。 ChIP-seq は、次世代シークエンサーを用いるこ とにより、免疫沈降されたクロマチン領域の DNAを網羅的に同定する方法である。また外生殖器を用いたRNA-seqのデータと組み合わせて、外生殖器で実際に発現している遺伝子の特定、さらにその遺伝子の発現制御領域の予測が可能となる。さらにAR KO マウス・Mafb KO・転写因子 X KO マウス等を用いて、申請者が得意とする発生医学的・組織学的解析を行い、遺伝子カスケード及び機能を明らかにしつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度はまず、既に申請者が特定した外生殖器における性ホルモンの標的の尿道形成制御因子MAFB 及び新規外生殖器サイズ制御因子転写因子 X の下流標的因子を明らかにするために、MAFB, X の雄特異的な発現が確認される E15.5 のマウス外生殖器原基を材料とし、MAFB 及びXに対する抗体を用いてChIP シークエンス(ChIP-seq)を行いつつある。さらにAR KO マウス・Mafb KO・転写因子 X KO マウス等を用いて、申請者が得意とする発生医学的・組織学的解析を行い、遺伝子カスケード及び機能を明らかにしつつある。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は前年度に同定した標的候補遺伝子に関して、AR KO マウス・Mafb KO・転写因子 X KO マウス等を用いて、申請者が得意とする発生医学的・組織学的解析を行い、遺伝子カスケード及び機能を明らかにする。また、本研究の独創性は、外生殖器の組織スライスを用いた器官培養系を用いる点である。この系は、尿道が陰茎内部に取り込まれる雄型の尿道形成過程を in vitroで再現できる、世界で初めての外生殖器器官培養系である。またこの系は遺伝子導入も可能であり、すでに先行実験を行っている。この系を用いることで、より詳細にかつ迅速に、 外生殖器における遺伝子の機能解析や転写制御領域を含むコンストラクトを導入した発現制御解析することが可能となる。具体的に、培養した外生殖器に標的候補遺伝子に対する siRNA や関連シグナルに対する阻害剤を導入し、尿道形成過程や器官のサイズへの影響を解析する。特に尿道形成過程は胎児期の神経管形成のような管腔形成過程と類似している点が多いと予想され、興味が持たれる。そこで管腔形成に重要な細胞増殖・細胞死・細胞移動・細胞極性に特に注目し、組織学的解析や分子マーカーを用いた解析によって詳細に調べる。以上の解析を行い、外生殖器 における MAFB、転写因子 X、それらの下流因子の機能を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は執筆する予定だった論文投稿が遅れ、論文掲載料、英文校正費、学会発表費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。
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