研究課題/領域番号 |
17K18025
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
河野 良平 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70569110)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 抗アレルギー作用 / 花粉症 / 脱顆粒 / 山椒 / 食品 / 天然物 |
研究実績の概要 |
本研究では、花粉症などのⅠ型アレルギー疾患の患者数は増加の一途を辿り、社会的な問題となっていることを理由として、これまでに明らかにした山椒由来脱顆粒抑制物質2種が、複雑なアレルギー反応機構に対してどのように作用しているかを分子・細胞レベルおよび生体レベルで解明することを目的としている.Ⅰ型アレルギー治療薬として用いられている脱顆粒抑制薬はヒスタミン等の炎症物質の遊離(脱顆粒)を抑制することによって、Ⅰ型アレルギーの諸症状を緩和する.マスト細胞として扱われるラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3を用いた試験から、山椒由来脱顆粒抑制物質2種はこのような抗原刺激によって起こる脱顆粒反応を抑制すること、マスト細胞内のCa2+濃度の上昇を抑制することが明らかとなっている. そこで本年度は、山椒由来脱顆粒抑制物質2種の脱顆粒抑制作用の作用機序を明らかにするため、抗原刺激の代替えとしてよく使用されるカルシウムイオノフォアを使用してマスト細胞内のCa2+濃度を上昇させることによる脱顆粒反応を抑制するかどうかを調べた。次に、ラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3は通常のマスト細胞とは異なる性質を有することが知られているため、マウスの大腿骨から採取した骨髄細胞を分化刺激することによって通常のマスト細胞(BMMC: bone marrow-derived mast cell)を得た。このBMMCにおいても山椒由来脱顆粒抑制物質2種が脱顆粒抑制作用を有するか否かを確認した。さらに、ライブセルイメージングによる脱顆粒抑制作用機序解明に向けて、RBL-2H3のアクチンにGFPを付加することを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山椒由来脱顆粒抑制物質2種(ZP1とZP2)の脱顆粒抑制作用の作用機序を明らかにするため、抗原刺激の代替えとしてよく使用されるカルシウムイオノフォアを使用してマスト細胞内のCa2+濃度を上昇させることによる脱顆粒反応を抑制するかどうかを調べたところ、ZP1とZP2どちらもカルシウムイオノフォア刺激による脱顆粒反応を抑制した。すなわち、IgE非介在性刺激であっても脱顆粒が抑制されることから、作用機序解明への足掛かりが得られた。また、IgE介在性刺激による細胞内Ca2+濃度の上昇はZP1が強く、ZP2が中程度抑制したことに対し、IgE非介在性刺激による脱顆粒ではZP1よりもZP2が強く抑制したことから、ZP1とZP2の構造はよく似ているにも関わらず、これらの物質の抑制機序がことなることが予想された。次に、BMMCを用いてIgE介在性脱顆粒に対する抑制効果を検討した結果、ZP1とZP2どちらも脱顆粒反応を抑制することが明らかとなった。したがって、通常のマスト細胞に対してもZP1とZP2は抑制効果が発揮されるとわかった。さらに、ライブセルイメージングによる脱顆粒抑制作用機序解明に向けて、RBL-2H3のアクチンにGFPを付加することを試み、安定的にActin-GFPを発現するRBL-2H3を得ることに成功した。以上の進行状況から、当初の計画通りに進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は29年度に引続き、山椒由来脱顆粒抑制作用を有するZP1およびZP2を用いて、その詳細な作用機序を解明する。本年度の研究により、ZP1とZP2の構造はよく似ているにも関わらず、これらの物質の抑制機序が異なることが予想されたことから、どのように作用機序が異なるのかを、タンパク質のリン酸化解析等によって調べることを計画している。また、生体レベルでZP1とZP2が抗アレルギー効果を発揮するか調べるために、ZP1とZP2を大量に精製し、Ⅰ型アレルギーモデル反応である受動皮膚アナフィラキシー(PCA)反応を抑制するかを、マウスを用いて調べることも計画している。さらに、Actin-GFP発現RBL-2H3を用いたライブセルイメージングによってリアルタイムに起こる脱顆粒反応とZP1とZP2の抑制効果を視覚的にとらえ、作用機序解明への手がかりとすることを目指す。
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