研究実績の概要 |
花粉症などのⅠ型アレルギー疾患の患者数は増加の一途を辿り、世界的な問題となっている. アレルギー反応にはマスト細胞が深く関与する. そこでマスト細胞として扱われるラット好塩基球性白血病細胞株RBL-2H3に対する脱顆粒抑制効果を指標として、山椒(Zanthoxylum piperitum, ZP)中に含まれる脱顆粒抑制成分を探索した結果、山椒由来脱顆粒抑制物質として、1-acetoxy-7-hydroxy-3, 7-dimethylocta-2E, 5E-diene (ZP1) および 8-hydroxygeranyl acetate (ZP2)を単離、同定した. これらの物質はこれまでに明らかにされた山椒中に含まれる脱顆粒抑制成分ヒドロキシαサンショールよりも強い脱顆粒抑制作用を示した. ZP1とZP2はいずれも、IgE介在性脱顆粒および細胞内カルシウムイオン濃度の上昇を抑制した. 一方、イオノフォア刺激によるIgE非介在性脱顆粒も抑制するが、細胞内カルシウムイオン濃度の上昇は抑制しなかった. また、 IgE介在性刺激による細胞内カルシウムイオン濃度上昇の前に起こるLynの活性化はZP1とZP2によって抑制されていた. したがって、ZP1とZP2はいずれもIgE介在性脱顆粒の初期に活性化されるLynを抑制するだけでなく、細胞内カルシウムイオン濃度上昇後に起きる顆粒と細胞膜の融合やアクチン再構築等を抑制することが示唆された. またこれらの物質はマウス骨髄細胞から分化させた正常な骨髄由来マスト細胞に対しても脱顆粒抑制効果を示した. さらに、ZP1とZP2をマウスに経口投与したところ、Ⅰ型アレルギーモデル反応である受動皮膚アナフィラキシー(PCA)反応を抑制した. 以上から、ZP1とZP2の抗アレルギー作用の一端を明らかにした.
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