人間生活の場の非定常・非一様性を有する複雑である環境の「見える化=定量化」を目標に,夏季暑熱環境において支配的なふく射環境の非均一性に対する検討をはじめに行った.現実的な屋外環境として道路舗装上などいくつかの空間を選定し,環境物理量,生理量,心理量の測定実験を行った.前年度において,物理的環境,人体生理状態,人体心理の要素を統一的に把握できる適応評価指標を人体熱収支モデルに基づく「人体熱負荷量」指標として整理しており,測定量を基にして「人体熱負荷量」による定量化を行い,被験者の応答と比較することで精度検証を行った.結果として,人体熱負荷量のレベルに応じて温冷感が変動することが確認でき,本指標は複雑環境においても適応評価指標として適応可能であることが示された. また,実測ベースで活用できるだけでなく,例えば数値解析手法などと統合した活用の可能性を検討した.空間の温熱環境評価を行うにあたり数値解析に適用する際,環境物理量の形成に対して空間を構成する材料物性の影響が大きいことから挙げられる.そこで空間構成材料の物性を簡易的にセンシングする手法を構築することで,環境形成,さらには温熱環境評価が実施可能となった. 以上により,人体に着目しその熱ストレスを低減し安全・快適性を確保するために,人体およびその周囲環境とで構成される系の温熱環境解析モデルとして統一的に評価できるシステムを構築し,実空間評価だけでなく,環境設計に有用な事前評価にも活用が可能となった.また,本評価手法の適用例として,舗装関連会社と共同でヒトに優しい舗装設計を実践した.
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