本研究では,透析中に神経筋電気刺激療法(Neuromuscular electrical stimulation:NMES)を用いたトレーニングを行い,その効果を検証した。 平成29年度および平成30年度の研究結果により,透析治療中の下腿筋へのNMESは循環動態が変動するほどの影響を認めず安全に実施できることが確認できた。従来型の透析中の運動療法(ベッド上での自転車エルゴメーター,レジスタンストレーニング等)を行う群と下腿筋へのNMESトレーニングを行う群に分けてトレーニング効果を検討したところ,介入後3ヶ月時点では従来型の運動療法を実施している群では運動機能評価で有意に改善を認めた項目があった。NMES群については改善傾向を示す項目もあったが介入前に比べ3ヶ月後で有意差を認めなかった。 平成31年度は透析中の下腿筋に対するNMESトレーニング効果について引き続き検討を行い,運動機能評価として,足趾筋力,膝伸展筋力,開眼片脚立位時間,Timed up and go test,Functional reach test等を実施した。介入前に比べ介入6ヶ月後において,従来型の運動療法を実施している群では,膝伸展筋力,Timed up and go test,Functional reach testで有意に改善を認めた。一方,NMES群については,膝伸展筋力で有意な改善を認めた。引き続き詳細な検討が必要であるが,透析中の下腿三頭筋へのNMESは従来型の運動療法と同様に膝伸展筋力を改善させる可能性が示唆された。
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