機械製品の基本設計ではCAEによる各種解析が行われており,詳細設計においては近年,CATが利用されつつある.これらの計算で解析対象となる製品形状は,幾何学的に理想な形体でモデル化されることが一般的であり,加工誤差などの凹凸を有するモデルを作成する場合はランダムフィールド法が用いられている.もし,実際の加工後の形状に近いモデルを準備できれば解析結果の精度を上げることができ,どこまで丁寧に加工すればよいかの判断基準に用いられる.すなわち,形状モデルを改良することは品質とコストの両面に寄与する.また,大量生産品のばらつき解析への応用や,幾何公差における統計公差指標の有効性の検証を見越して,その形状モデルはランダムに生成されることが望ましい.そこで本課題では,機械加工面の特徴を有する単一表面モデルをランダムに生成する手法を確立する. 一昨年度は,Wavelet Decomposition を利用した疑似表面モデルのランダム生成法を提案した.去年度は,最適なMother Waveletの選択を行った.また,ランダムに生成した二つの擬似表面モデルの噛み合わせ後の組み立て姿勢を計算するソフトを開発し,従来手法の形状モデルとの比較を行った.最終年度は,提案手法と従来手法の形状モデルを用いて2表面の接触状態のばらつきを検証した.同様に,構造解析においてこれら二つの形状モデルを用いて,応力計算の結果を比較した.ここまで当初の計画通りに進められた.これを超える成果を3点挙げる.接触点において局所的に弾性変形すると仮定し組み立て姿勢を計算するソフトウェアを改良した.複数の表面モデルを組み合わせ,立体,円筒モデルの作成法を提案した.Dual-Tree Complex Wavelet Transformを利用することで,同心円パス等の曲線の加工痕を含む表面もランダムに生成することが可能となった.
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