在宅で暮らす重症心身障害児(者)(以下、重症児(者))において、医療的なケアを必要とするケースが増加し、高年齢化も進んでおり、高齢者家族等にも介護が必要な状況が発生しているという未曽有の事態が発生している。このことを背景に、本研究は、多重介護を担っているもしくは、担った経験がある重症児(者)の母親から、その多重介護の実態を明らかにし、その困難性の要因とケアレジームを見出すことを目的とし、その経験者に18名を対象に半構造化面接を実施した。 その結果、多重介護の様相は、<同居型><呼び寄せ型><近距離別居型><遠距離別居型>が存在することが明らかとなり、この様相を選択決定する要因としては、被多重介護者(高齢者家族等)の療養期間や予後予測が可能な状態であり、多重介護期間の予測が可能かどうか、多重介護負担をサポートしてくれる支援者が家族内もしくは、社会的サービス内であるかどうかが大きく影響していた。 また、この多重介護を引き受ける大きな決意要因としては、高齢者家族等の被介護者(主に、実父母、義父母)が重症児(者)の子育てにどのくらい関わってくれていたかとう【子育てを助けてくれた恩がある】が影響していた。 これに加えて、【行政等の支援者側の多重介護体制作りへの柔軟な対応】にも左右されていた。都道府県をまたぐサービス受給決定に柔軟な対応や、直接支援側のケアニーズに応じた柔軟な対応があるか等であった。多重介護発覚時に、これらのような支援が身近にあると、多重介護を担う決心をつけていることが明らかになった。これらの根底に、【重症児(者)側の準備性】も関与しており、常日頃から、いざという時に備えた母子分離経験等の自立支援にともなった準備性が必要であることが示唆された。また、多種多様なケースに対応できるケアモデル構築がさらなる課題であり、今後も継続研究に努める。
|