研究実績の概要 |
これまで、虚血性脳組織障害である大脳白質病変と危険運転行動との関連が報告されてきた。ところがこれまでの報告では、白質病変を評価者がMRI画像を目視しながら、その有無を評価した定性的なものや、脳全体の白質病変量を大まかに4段階程度に分類しただけのものであった。本研究では、最新の画像解析技術を用いてMRI画像から1mm3単位毎に抽出した白質病変の定量化データを用いて、白質病変と危険運転行動との関係をより正確に検討することを試みた。 H29年度は、白質病変の定量化データと危険運転行動アンケートのデータベースを作成した。まず、2010年から2016年までの約20,000件の脳ドックデータから、VBM法による最新の画像診断技術によって作成した白質病変の定量化データと危険運転行動アンケートがそろっている、約7,000件を抽出した。危険運転行動アンケートについては、アンケート結果から、運転頻度、事故形態別の事故経験の有無、高速道路の逆走有無など、さまざまな項目を抽出した。次に、このデータベースから、2度以上受診しているリピーター(2,693名)を抽出し、事故前後データのある1,166件を抽出した。 H30年度は、H29年度に作成したデータベースから、脳ドックを2回受診した健常中高年ドライバー573名を対象に、2時点間の白質病変容積の変化量と交通事故との因果関係を検討した。2回目受診時に、過去10年間における事故歴なし群(209名)と単独の事故歴あり群(12名)、2回以上の事故歴あり群(13名)の3群間の差の検定を行ったところ、事故歴なし群と2回以上の事故歴あり群間でのみ白質病変容積が有意に増加していた。これにより複数事故と白質病変との因果関係の存在が示唆された。
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