最終年度である平成31年度(令和元年度)は、萌芽的構文・橋渡し的構文の創発の認知メカニズムについて、使用依拠モデルの観点から構文ネットワークと関連づけて検証し、さらに総括として理論的一般化を行うことを目指した。 まず、頻度が低い萌芽的構文や橋渡し的構文の創発の認知メカニズムに関して、「主題非明示型結果構文」を具体例として取り上げ、「構文化」の観点から検証を行った。この点は当初の研究計画にはなかったが、理論的一般化に大きな影響を及ぼすことが予測されたため、明らかにすることとした。研究結果として、萌芽的構文としての主題非明示型結果構文が構文化によって創発した可能性があることが実証された。この研究成果の一部は15th International Cognitive Linguistics Conferenceの研究発表にて公表した。 次に、総括として、萌芽的構文・橋渡し的構文の創発の認知メカニズムの理論的一般化を行った。要点は以下の2点である。 1. 萌芽的構文・橋渡し的構文は、隣接するより確立された言語単位としての主要構文の認知操作の一部を換喩あるいは隠喩に基づいて継承する。その際に、構文に反映される事態を捉える人間の認知操作の微妙な差異がネットワーク形成に影響を及ぼす。 2. 創発には、(1)確立された主要構文[A]と[B]の融合(amalgam)によって新奇の萌芽的構文・橋渡し的構文(C)が発生する場合、(2)確立された主要構文[A]から橋渡し的構文(C)を経て主要構文[B]が発生する場合、(3)新奇の萌芽的構文が構文化により発生する場合、の少なくとも3つの過程がある。 これまでの研究期間で得られた研究成果は、各年度の研究発表、学会発表にて中間報告として公表を行ったが、総括としての理論的一般化に関しては、今後も雑誌論文等に投稿することで国民に広く公開を行っていく。
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