本研究は,多文化社会へ向けて地域コミュニティが外国人をどのように受け入れ,支援していけばよいのかという問いに対するコミュニティアプローチとして,地域での異文化受容の在り方を検討することを目的としている。2020年度においては,コロナの影響を検討するための予備調査として,大学生を対象に予備調査を実施し,経済的不安が高いほど外国人への感情にネガティブな関連性を示し,規範信奉性が高いほど外国人への感情にネガティブな関連性を示していた。そして,コロナ不安が経済的不安と規範信奉性と関連を示していたことから,直接効果ではなく間接的にコロナ不安が外国人への感情にネガティブに関連していると考えられる。2021年度から2022年度においてはコロナ感染に関わる状況に変化がなく,先行研究文献の検討が行われた。 2023年度において,関東1都3県の18歳から70歳を対象にインターネット調査を実施した。調査では地域コミュニティ意識とSense of Community(SOC)の尺度に,文献研究から検討された互恵性と関係流動性の観点を組み込み,ゆるやかなつながりと強いつながりという視点から外国人受容態度との関連性を検討した。それらは先行研究で指摘されている農村型コミュニティと都市型コミュニティという観点と類似する傾向が見られ,その地域での称賛獲得意識や地域からの拒否回避意識との間での直接的,間接的な効果を示しながら外国人受容態度との関連を示していた。また,その地域コミュニティの形態と地域のどのような側面を重視しているのかということにも関連性が見られ,その組み合わせによっても外国人受容態度に異なりが見られた。ただし,デモグラフィック変数や実際の居住地域の特性によっても結果が変わる傾向が見られ,それらをより精査分類し,より具体性を持った地域コミュニティの構造と性質を同定する必要がある。
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