研究課題/領域番号 |
17K18042
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
森川 夏乃 愛知教育大学, 学内共同利用施設等, 助教 (70757252)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 起立性調節障害 / 心身症 / 家族関係 / 家族支援 |
研究実績の概要 |
平成29年度は,心身症症状を呈する子どもやその親が,発症当時から現在に至るまで症状をどのように理解しているかや,ストレスや感情を抱いているか,また症状に対してどのように対応してきたかを調査することを通して,症状の回復に至るまでの心理的プロセスを明らかにすることを目的とした。 心身症症状を呈している生徒(中学生・高校生)本人及び心身症の子どもを持つ親の30人に対してインタビュー調査を実施した。特に本研究では,起立性調整障害の子どもとその親を対象とした。 インタビューでは,発症当時,3か月から半年が経過した頃(中期),現在の3時点について,①症状をどのように理解していたか,②その当時の心境や感情,③症状に対する対応について聞き取りを行った。 その結果,親においては次のようなプロセスがあることが示された。発症当時は症状を理解することができず,また学校を欠席することの焦りにより混乱し,ストレスが高くなることで子どもと対立したり強制的な対応をする。しかし,次第に体調変化の波や子どもが感じているしんどさを理解することで,子どもを信頼し子ども自身の主体性を中心とした対応になっていくことが示された。また,子どもにおいては,発症当時は将来への不安や親との対立によりストレスが高い。しかし次第に親が落ち着いていくと同時に子どもも精神的に安定し自分の体調の波に合わせて過ごすようになり,日常生活の活動量も増加し症状も安定していくことが示された。その中では,学校側との連携や医療機関による適切な説明,ピアグループによる精神的な支えといった周囲からサポートの影響も大きいことが考えられた。 以上より,家族に対して症状理解や症状との付き合い方の理解を促す心理教育的な支援や,他機関と連携した家族支援の重要性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通りインタビュー調査を完了したことから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,親と子ども本人双方に対して質問紙調査を行い,親の症状への対処行動や精神状態と,子ども本人の症状の訴えや精神状態がどのように相互に影響し合い,症状の増減と関連しているのかについて検討する。 具体的には,6か月以上心身症症状を呈している,生徒(中学生・高校生)本人と親の約100名を対象とする。親に対しては,現在のストレス状況,症状への対処行動について調査し,子ども本人に対しては現在のストレス状況及び症状の程度について調査する。 本研究を通して,双方の症状理解や対応,また精神状態がどのように関連し合い,症状の悪化につながる悪循環の相互作用を形成しているのかを解明し,心理教育の内容を精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属の異動があったため,調査依頼団体への調査依頼や調査にかかる交通費において,当初計画していた額から変動があった。またデータ整理にかかる人件費を計上していたが,所属の異動に伴い,データ整理の仕方に変更があったため,人件費に残額が多くなった。 これらの残額は,次年度以降の調査協力者への謝礼金やデータ整理の費用として使用する。
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