研究実績の概要 |
前年度の質問紙調査より、心身症の子どもへの親の関わり方と子どものストレスが関連することが示された。この結果より、2019年度は、子どもへの関与の仕方に影響を与える家族内相互作用について検討することを目的とした。また従来の研究より、親子関係は夫婦関係との関連が指摘されていること、2017年度に実施した質的研究より、夫婦間でのコミュニケーションが子どもへの関わり方の背景にあることが示唆されたことから、特に夫婦間のコミュニケーションと子どもへの関与や、問題が生じた際にどのような行動をとるか関連を検討した。 小学1~3年生の子どもを持つ母親309名と、中学生の子どもを持つ親309名を抽出し、インターネット調査を実施した。質問項目は、「夫婦間コミュニケーション態度に関する尺度」(平山・柏木, 2001 )、「肯定的・否定的養育行動尺度」(伊藤ら, 2014)、問題が生じた際にどのような行動をするかを問う5項目について尋ねた。 その結果、夫婦双方が共感的、お互いに心理的に近づこうとする接近的なコミュニケーションをとっている場合、子どもの意思を尊重したり、子どもに対して肯定的な応答をすることが示された。また、問題時には家族内での話し合いを行い対応することが示された。反対に、夫婦の一方が威圧的であったり、無視や回避をするコミュニケーションをとっている場合、子どもへの過干渉や厳しい叱責をすることが示された。 この結果より、心身症症状を呈する子どものストレス軽減を目的として家族に介入を行う場合、親から子どもへの関わり方だけでなく、夫婦間のコミュニケーションの取り方についても調整を行うことが求められる。子どもが不調を呈している場合、夫婦間で話し合う時間を持ったり、双方の話を聴く時間を持つなどの時間を作ることで、子どもに対して肯定的な関わり方ができるよう家族全体の関係を調整していくことが必要である。
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