本研究は、加齢に伴い生じ、罹患者のQuality of Lifeを著しく障害する感覚器の障害について循環器疾患危険因子との関連を検討するものである。 本年度は昨年度執筆した英文論文の投稿及び掲載に関する手続きを進めるとともに、データの追加分析を行った。昨年度の報告書作成時点でin pressであった論文1編がBMJ Open誌掲載され、さらに今年度完成した論文1編もBMJ Open誌に掲載された。 追加の分析として、高血圧者における聴力低下(定期健康診断における聴力検査有所見)の発生に関する縦断的な分析を行ったが、聴力低下の発症者が少なく、明らかな関係は示されなかった。また、視力に関する調査を行うため、健康診断時に実施している視力検査の結果について評価を行ったが、裸眼視力と矯正視力の両方を測定している者が多くないなど、一定の基準で視力障害を判定することが困難であることが明らかとなった。 3年間の事業期間を通じて、日本人労働者において、尿蛋白陽性所見を有する者に聴力低下の有所見率が高いこと、尿蛋白陽性所見を有する者では将来の聴力低下発生リスクが有意に高くなること、高血圧者では聴力低下の有所見率が高いことを示すことができた。比較的知られている糖尿病と聴力障害の関係も含めて考えると、日本人労働者において、循環器疾患の危険因子を有する者では聴力低下のリスクが高くなることが推察される。しかし、本研究で得られた結果は日本の2企業から得られたデータに基づいた結果であり、今後、一般住民を含めた多様な集団において同様の傾向がみられるか検討していく必要がある。 研究協力者:小橋元(獨協医科大学)、原美佳子(TSネットワーク)
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