研究課題/領域番号 |
17K18053
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
渡邉 観世子 国際医療福祉大学, 保健医療学部, 准教授 (80433613)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 運動イメージ / 杖 / 歩行 |
研究実績の概要 |
本研究では正確で安全な杖歩行の習得に向けて,松葉杖歩行における運動イメージの特性および運動イメージと運動機能との関連について明らかにすることを目的としている.歩行時の杖の使用は姿勢や動作の安定性に貢献する一方で,運動制御(下肢の荷重制御や歩幅の制御)や操作の困難さなどの負の影響についても報告されている.そのため本研究では松葉杖を使用することにより,歩行速度のイメージがどのような影響を受けるのか,また加齢による運動機能の低下がそのイメージにどのような影響をもたらすのかについて検討している. 平成29年度は10m歩行課題において,松葉杖の使用の有無により歩行速度のイメージ能力に差が生じるかについて若年健常成人10名と健常高齢者19名を対象として実験をおこなった.その結果,高齢者は杖を用いない通常の歩行では自身の歩行速度を過小評価(実際の歩行速度よりも遅い速度を見積もる)するが,松葉杖歩行では過大評価(実際の歩行速度よりも速い速度を見積もる)することが分かった.また松葉杖使用における過大評価は,若年者も同様に認められた.若年者も高齢者も同様に認められた松葉杖の歩行における過大評価は,実際の日常生活場面では,例えば道路を時間内に横断する際に誤った危険度の高い判断を導く可能性がある.そのため現在は,10m歩行だけではなく,その他の応用歩行課題において,松葉杖を使用することによる運動イメージの正確性を調査している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「10m歩行」課題という単一の課題のみではあるが,松葉杖の使用による運動イメージの特性について加齢による影響も含めて明らかにすることができた.今後はその他の,歩行や運動機能に関連する課題において,松葉杖の使用が運動イメージに与える影響を検証していく予定である.
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画では,まず「荷重イメージの特性」を明らかにすることとなっていたが,平成29年度に実施した10m歩行を課題とした「歩行速度のイメージ特性」の検討結果から,より日常生活に関連する歩行・運動機能動作にも着目し,松葉杖の使用による影響を明らかにする必要性があると考えられた.そのため平成30年度はまず,その検討を優先して行うこととする.また,イメージの計測のみならず,松葉杖を用いることによる歩行特性(歩数,歩幅など)についても解析することでより詳細なイメージ特性が明らかになると考えている.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初平成30年度に計画していた研究計画を優先して遂行したため,予算の使用予定を変更した.平成30年度は,参加者への謝金や歩行分析に関する機器にかかる費用,学会発表にかかる費用として予算を使用する予定である.
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