研究課題/領域番号 |
17K18060
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
桑原 拓也 日本工業大学, 基幹工学部, 准教授 (70602407)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 非熱プラズマ / 磁気機能性流体 / 磁性流体 / ディーゼル微粒子 / 排ガス浄化 / 環境保全 |
研究実績の概要 |
マイクロ・ナノサイズの排ガス微粒子を圧力損失なしで再飛散なく捕集し、酸化燃焼除去するためのプラズマ放電磁気機能性流体ならびに排ガス微粒子浄化システムを開発する。実験による微粒子捕集特性の検証に加えて理論解析により排ガス微粒子浄化システムを最適化する。プラズマ放電条件や排ガス流動条件を変化させ、プラズマ放電磁気機能性流体の捕集効率を明らかにする。これらの学術的研究を行い、HEPAフィルタを上回る捕集性能を有し、圧力損失が0.5 Pa以下の性能達成を目標とする。今年度の成果は以下の通りである。 排ガス微粒子捕集除去のための非熱プラズマ放電磁性流体フィルタを提案した。排ガス配管に設置する排ガス微粒子捕集部の外側に磁石を固定し、捕集部の内側に磁石から発生する磁場により磁性流体を固定し、その際につくられる磁性流体のスパイクから非熱プラズマ放電する高機能磁性流体フィルタである。前年度の非熱プラズマを用いない場合の排ガス微粒子の磁性流体表面吸着についての調査結果をもとに、磁場で保持された複数の磁性流体の塊に同一電極で磁性流体スパイクから非熱プラズマ放電を発生させることに成功した。磁束密度を変化させることで磁性流体スパイクの大きさや数を制御することができ、高磁束密度で小さいスパイクを数多く発生させることで効率的に排ガス微粒子を捕集できるという考察を行った。また、排ガスの流れにより磁性流体スパイクも動くため、非熱プラズマ放電も移動するという現象を発見した。 本研究で重要となる非熱プラズマ放電磁性流体フィルタの作製ならびに放電システムの構築を行い、実験により検証することで排ガス微粒子の捕集の高効率化に向けて前進したという研究成果の意義は大きい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
排ガス配管に設置した磁性流体のスパイクから非熱プラズマ放電する高機能磁性流体フィルタを開発した。前年度に開発した磁性流体フィルタの基本構造は維持し、磁性流体と磁石の間に電極と誘電体を配置することにより、6個の磁性流体の塊(2.5 mL)に同一電極で磁性流体スパイクから非熱プラズマ放電を発生させることに成功した。非熱プラズマ放電の電圧は10 kV、電流は120 mA、周波数は9 kHzである。磁束密度を変化させることで磁性流体スパイクの大きさや数を制御することができ、高磁束密度で小さいスパイクを数多く発生させることで効率的に排ガス微粒子を捕集できるという考察を行った。また、排ガスの流れにより磁性流体スパイクも動くため、非熱プラズマ放電も移動するという現象を発見した。 非熱プラズマ放電磁性流体フィルタの捕集能力を評価するため、排気量211 mLの実機ディーゼルエンジンの排ガスを分流して、非熱プラズマ放電磁性流体フィルタを通り抜けた微粒子を捕集サイズが保証された膜フィルタで捕集し、流量変化を測定することで非熱プラズマ放電磁性流体フィルタの捕集能力を評価した。実験結果より、磁性流体のみの場合と非熱プラズマ放電を付加させた場合と比較して捕集能力に差は見られなかった。この実験結果は処理した排ガスの流量が非熱プラズマ放電磁性流体フィルタの能力を超えていたことを示唆するとともに、膜フィルタを通り抜けるようなサブマイクロ粒子に対して効果がある可能性も示唆する結果と考えられる。 以上の進捗状況より6個の磁性流体の塊に同一電極で磁性流体スパイクから非熱プラズマ放電を発生させることに成功したことについては当初計画以上の進展が見られたものの、排ガス中のディーゼル微粒子に対する非熱プラズマ放電磁性流体の捕集機能の解明については当初計画の進展が見られなかったため、上記の評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の規制はより厳しい粒子数(PN)による規制に移りつつあるため、定量的に磁性流体フィルタの捕集効率を明らかにする。今年度の実験結果から得られた知見に基づいて、低流量排ガスに対して、磁性流体のみの場合と非熱プラズマ放電を付加させた場合の捕集能力を比較する基礎実験を実施する。粒子数については排ガス微粒子をサンプリングして粒径ごとに粒子数を測定するパーティクルカウンタを用いて測定を行う。排ガス微粒子捕集部の上流と下流の排ガス微粒子質量と粒子数(PN)を測定し捕集効率を算出する。なお、当初計画より捕集率が低い場合、磁性流体の配置改善や非熱プラズマ放電の最適化などにより捕集効率の向上に努める。 さらにまだ実施していない排ガス微粒子酸化除去機能の解明も達成目標とする。放電時のオゾン濃度計測を行い、提案する方法におけるオゾン濃度と排ガス微粒子の酸化との相関関係を明らかにする。合わせて、放電電力とエンジン出力の関係から本システムのディーゼル微粒子捕集除去におけるエネルギー効率を算出し、実用化に向けた優位性を評価する。また、オゾンの熱分解が促進される180℃程度の高温下での磁性流体による非熱プラズマ放電の実現についても検討する。計画どおりに進まない場合は、別途酸素から無声放電により高濃度オゾンを発生させてから捕集部に注入する方法で酸化除去効率を向上させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は必要に応じた執行分の端数として生じたものである。実験消耗品の購入に使用する。
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