研究課題/領域番号 |
17K18061
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
水戸部 悠一 埼玉医科大学, 医学部, 研究員 (50783255)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | がん特異的長鎖非コードRNA |
研究実績の概要 |
婦人科腫瘍の中でも特に予後が悪いことで知られている卵巣がんの進展、悪性化に関わる長鎖非コードRNAを同定するために、卵巣がんにてRNA-seqを行い、網羅的な遺伝子発現解析を行なった。その結果、いまだ同定されていない多数の長鎖非コードRNAが非がん部組織と比較して、卵巣がんにおいて発現が大きく変動していることが判明した。その中でも特に卵巣がんにおいて発現が高く、非がん部組織では発現が低い、がん特異的に高発現している長鎖非コードRNAに着目した。着目した長鎖非コードRNAは未だ同定されておらず、スプラシングサイト等の正確な構造も不明である。申請者は正確な転写開始点、また終止点を明らかにするために5’ rapid amplification of cDNA end (RACE)法、3’ RACE法を行った。さらにRACE法によって得られた情報を元に当該長鎖非コードRNAのクローニングを行い、正確な転写産物を同定した。これら長鎖非コードRNAに対するsiRNAを用いたノックダウン実験を行なったところ、複数種類の卵巣がん細胞株にて細胞増殖が抑制されることが判明した。さらにFISH法を用いて当該長鎖非コードRNAの細胞内局在を明らかにした。また長鎖非コードRNAノックダウン下でのマイクロアレイ解析を行うことによって、当該長鎖非コードRNAの関与するシグナル経路を同定することができた。さらには本研究課題で学んだ長鎖非コードRNAの知識を生かして、Cancer Lettersに総説を執筆した(Cancer Letters. 418:159-166, 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究によって、申請者らは卵巣がんにおいて高発現している長鎖非コードRNAを同定した。またsiRNAを用いた実験から、同定した長鎖非コードRNAは、がんの増殖に関わる可能性が示された。長鎖非コードRNAはタンパク質等の他の因子と結合することで機能することが知られており、結合因子を同定することは非常に重要である。当該長鎖非コードRNAの結合因子の同定は平成29年より現在も継続して進めている。それ以外の研究計画についても実施できており概ね順調に研究は進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1) 長鎖非コードRNAの結合因子の同定と作用メカニズムの解明 マイクロアレイ解析を元にパスウェイ解析を行い、同定した長鎖非コードRNAと強く関連していると予測されるタンパク質との結合を、RNA免疫沈降法を用いて解析する。長鎖非コードRNA結合タンパク質が同定された場合、結合タンパク質の機能に応じて長鎖非コードRNAの詳細な機能解析を行う。 2) 解明したメカニズムの臨床応用 腫瘍を移植した免疫不全マウスに対し、長鎖非コードRNAに対するsiRNA、もしくは上記実験で得られた因子に対するsiRNA、阻害剤を用いた時の腫瘍の増殖に対する影響を測定することで、長鎖非コードRNA、また解明したメカニズムを元にした新規治療法への応用を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度の研究では長鎖非コードRNAの結合因子を同定するには至らず、次年度使用額が生じた。次年度使用額は引き続き長鎖非コードRNAの同定と、in vivoの卵巣がんマウスモデルの実験に使用する予定である。
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