卵巣がんは、婦人科腫瘍の中でも特に予後が悪いことが知られており、新規の診断、治療ターゲットが望まれている。倫理基準を満たした卵巣がんの臨床検体を用いたRNA-seqによる網羅的な遺伝子発現解析を行い、卵巣がん特異的に高発現する新規長鎖非コードRNAを複数同定している。複数の卵巣がん細胞株にて当該長鎖非コードRNAの発現を、siRNAを用いて抑制(ノックダウン)すると細胞増殖が抑制されることから、着目した長鎖非コードRNAは卵巣がんの進展に関わることが示唆された。次にfluorescence in situ hybridization法と細胞分画法を用いることで、当該長鎖非コードRNAが特徴的な細胞内局在を有することを明らかにした。さらに当該長鎖非コードRNAのノックダウン下における網羅的な遺伝子発現解析を、マイクロアレイを用いて行い、当該長鎖非コードRNAがターゲットとする遺伝子群を明らかにした。上記のように卵巣がん臨床検体のRNA-seqデータを有しているので、卵巣がん臨床検体の遺伝子発現データと当該長鎖非コードRNAノックダウン下のマイクロアレイデータを統合的に解析することで、当該長鎖非コードRNAのさらなるターゲット遺伝子群の絞り込みを行なった。 最後に卵巣がん細胞株を用いたin vivo腫瘍モデルを樹立し、当該長鎖非コードRNAのノックダウンは腫瘍の増大を抑制することを明らかにし、当該長鎖非コードRNAが卵巣がんの新規治療ターゲットとなる可能性を見出した。
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