研究実績の概要 |
本研究では,股関節深部に位置する小殿筋および梨状筋(Piri)にワイヤ電極を刺入し,基本動作および股関節周囲筋エクササイズを行った際の筋活動を測定することにより,股関節深部筋を強化する有効なエクササイズ方法を明らかにすることを目的とした. 被験者は健常成人男性12名とし,超音波画像ガイド下にて小殿筋前部線維(Gmin-a),小殿筋後部線維(Gmin-p),Piriにワイヤ電極を刺入した.大殿筋,中殿筋,大腿筋膜張筋(TFL),内腹斜筋,脊柱起立筋,多裂筋,外腹斜筋,腹直筋,大腿二頭筋,大腿直筋には表面電極を貼付した.実験試技は,①股関節外転,②股関節伸展,③股関節外旋,④股関節内旋,(①~④は股関節角度を変えた様々なポジションで実施)⑤Back bridge,⑥Side bridge,⑦四つ這い上下肢挙上(Hand-knee exercise)を行い,それぞれの筋活動量(%MVC)およびTFLに対する筋活動比(TFL比)を算出することで,股関節深部筋に有用なエクササイズを検討した. その結果,①股関節外転では,股関節伸展内旋位での挙上後期においてGmin-a:62.8%MVC(値は全て平均値), Gmin-p:54.2%MVCと有意に活動量が高かったが,TFL比ではGmed/TFL, Gmin-p/TFLは股関節内旋位や屈曲内旋位の挙上初期において有意に大きな値を示した.また,③④股関節外旋・内旋では,外旋でPiri,内旋でGminの活動量が高く,特に股関節30°屈曲位の内旋運動でGmin-pのTFL比の値が有意に大きかった.⑤⑥⑦Bridge exerciseの中では,side bridge足支持+下肢挙上で,Gmin-a:50.4%MVC,Gmin-p:49.7%MVC,Piri:76.3%MVCなど全ての股関節外転筋群の活動量が最も大きくなった一方で,TFL比はHand-knee股伸展(膝屈曲位)で最も値が大きく,side bridge足支持+下肢挙上はほとんどの筋で値が最も小さくなった. 本研究より,GminやPiriを強化するために他の外転筋と共同収縮するものや選択的に収縮するエクササイズが明らかになった.
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