研究実績の概要 |
本研究の目的はlong noncoding RNAによるCCND1遺伝子の発現制御メカニズムを解明することである。平成29年度は、研究計画に従い①メチル化したpncRNA-D断片6とTLSとの結合、②pncRNA-Dのm6A修飾を認識するリーダータンパク質の決定、③修飾酵素であるMETTL3とリーダータンパク質のノックダウンによる影響、を検証した。 ①については、m6A修飾を受けていると考えられる配列(GGACU)を中心に、20ntの長さのRNAを合成し、m6A修飾を入れたものと入れていないRNAを用意した。それぞれ5’側をbiotin標識しており、強制発現させたTLSとの結合を見た。その結果、m6A修飾単体ではTLSとの結合が強まることを明らかにした。 ②については、候補であったYTHDF1, 2, YTHDC1, hnRNP-A2B1の抗体を用いたRNA免疫沈降法によりYTHDC1が主にpncRNA-Dのm6A修飾を認識していることを明らかにした。 ③についてはMETTL3と②で同定したYTHDC1を、siRNAを用いてノックダウンした。METTL3のノックダウンではpncRNA-Dの発現量が上がり、さらに安定性が上昇した。YTHDC1のノックダウンはRNAの安定性には関与していなかったが、METTL3のノックダウンとともにTLSとの結合が強まった。 以上より、m6A修飾がpncRNA-Dの安定性とTLSとの結合に関与していることを明らかにしたので、平成30年度はpncRNA-Dが通常の細胞周期にも関与しているか、に着目して研究を進める。また細胞ストレスにより誘導されるpncRNA-D自体の転写調節機構についても研究を進める。
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